漢方つれづれ

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漢方つれづれ2020年
漢方つれづれ2021年
漢方つれづれ2022年

2023年 蒼朮のカビ(2023/1/5)
昔結核、今は悪性新生物(2023/1/16)
漢方でいう糖尿病(2023/1/23)
後医は名医(2023/1/30)
テレワークは心の負担が軽い(2023/2/6)
長寿を祝う(2023/2/13)
涙の味(特性)(2023/2/20)
健康食品、特に注意すべき成分(2023/2/27)
ポリファーマシー対策(2023/3/6)
爪で健康診断(2023/3/13)
漢方薬を飲む(2023/3/20)
アトピーの仕組み(2023/3/27)   

蒼朮のカビ(2023/1/5)
お正月のお屠蘇に入っているオケラは生薬名を朮(じゅつ)といいます。
朮には白朮(びゃくじゅつ)と蒼朮(そうじゅつ)の2種類があります。
漢の時代に記された『傷寒論(しょうかんろん)』では、この区別がなく、朮といえばどちらを使ってもよかったのです。

朮は、どちらもキク科で、白朮はオケラの根茎、蒼朮はホソバオケラの根茎です。
蒼朮の品質がよいものでは、生薬表面に白いカビのようなものが発生しますが、それをカビと間違って捨ててはいけません。
これは蒼朮に含まれるヒネソールやオイデスモールなどの精油成分が析出したものであり、
その白い結晶が多いほど精油含量が高くて良質の蒼朮といえます。

昭和の昔、お餅はまだ贅沢なもので、お正月に家族そろって食べていました。
鏡開きの頃、お餅によくカビがはえていたものですが、カビを取り除いて食べていました。
少しくらいカビが残っていても特に気にしなかったことを思い出します。

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昔結核、今は悪性新生物(2023/1/16)
1981年から現在まで続く死因のトップは悪性新生物(がん)ですが、
1950年までの死因1位で、国民病、亡国病などと呼ばれ、多くの人の命を奪ったのは、結核でした。
当初結核に罹ることは死につながることが多く、まさに不治の病と考えられました。

結核菌は空気感染で広がるため、完全に予防することが難しく、うつらないよう隔離するつらい病気でもありました。
抗生物質の登場で、不治の病でもなくなり、2021年、この結核が10万人あたり10人を切って日本は「低蔓延国」になりました。
G7(先進国)の中では最も遅い実現でした。
終戦直後の日本は衛生状態も悪く低栄養状態の子供も多かったのでしょう。

しかし、まだまだやっかいな病気です。現在は患者の大半は免疫力の衰えた高齢者。
70代以上が半数をしめています。

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漢方でいう糖尿病(2023/1/23)
漢方では、糖尿病(消渇:しょうかち、しょうかつ)は「多飲」「多食」「多尿」という「三多」を主症状とする病気であり、
次の3つの段階に分類します。
①上消(じょうしょう、肺消:はいしょう):多飲(口渇引飲:こうかついんいん)、口の渇きがひどくたくさんの水を飲む。舌は紅、体力未だ衰えず。
白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)、虚証には竹葉石膏湯(ちくようせっこうとう)、麦門冬湯(ばくもんどうとう)などを用います。

②中消(ちゅうしょう、胃消:いしょう):多食、たくさん食べても空虚感が癒されない。るいそう(いくら食べても体重減少)、汗が増え、便秘(大便硬)がち。
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)、大柴胡湯(だいさいことう)、調胃承気湯(ちょういじょうきとう)などを用います。

③下消(げしょう、腎消:じんしょう):多尿(小便膏濁:しょうべんこうだく)、小便の回数が増え、体力の疲弊、種々の合併症が出現。
八味地黄丸(はちみじおうがん)、六味丸(ろくみがん)、味麦地黄丸(みばくじおうがん)、
胃腸虚弱には清心蓮子飲(せいしんれんしいん)、冷えが強い時に真武湯(しんぶとう)などを用います。

糖尿病は、この順序で進行していきます。

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後医は名医(2023/1/30)
あなたは○○病だと最初から診断してくれる医師は多くありません。
たとえ風邪で受診しても、あなたは風邪ですと断定せず、帰る時に風邪薬をくれるといった感じだったりすることがあります。
それほど、病気の診断というものは難しいもので、当初見込んでいた病名と、後からわかる病名が異なることもあります。

後の方になって患者さんを診た医師は、経過もわかるし、症状が多くあって全体像がわかりやすくなります。
最初に診た医師とは情報量が違うので、診断はつけやすいし治療もうまくいくことが多いです。
だから後から担当した医師は、いつも名医のように見えるという見解が「後医(こうい)は名医」といわれる所以です。

漢方では、病名をつけません。
しっかり症状を聞き出し、病の全体像をつかんで治療するのが漢方です。

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テレワークは心の負担が軽い(2023/2/6)
睡眠を1日平均7時間以上取っている割合は、テレワークの頻度が「毎日」の人が30.3%と最も多く、
「週2~3日程度」の19.4%、「一時的に行った」の16.7%などを大きく上回っています。
うつ傾向や不安がない割合も、テレワークが「毎日」の人が60.9%で、「週2~3日程度」56.5%、
「一時的に行った」51.3%などより多くなっています。

このようにテレワークの頻度が多い人ほど睡眠時間が長く、うつ傾向や不安が少ないという結果が
厚労省の委託調査で明らかになっています。
通勤の負担が軽かったり家庭内の時間を長く持てたりする効果だと推測されています。
ちなみにテレワークの導入割合が最も高かったのは情報通信業(83.4%)で、次いで学術研究、専門・技術サービス業(62.7%)。
最も低かったのは医療、福祉(9.4%)や宿泊、飲食サービス業(13.3%)でした。

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長寿を祝う(2023/2/13)
日本人の平均寿命は女性87.57歳、男性81.47歳(2021年)。
長寿を祝う節目の年齢には、還暦(かんれき)、古稀(こき)、喜寿(きじゅ)、傘寿(さんじゅ)、米寿(べいじゅ)などの名称があり、
賀寿(がじゅ)として祝ってきました。
平均寿命が延びた最近では60歳の還暦はまだまだ長寿というよりは現役。
隠居には早いかも知れません。

還暦(60歳) 生まれた年の干支に戻ることから。
古稀(70歳) 唐の詩人・杜甫(とほ)の「人生七十古来稀なり」に由来。
喜寿(77歳) 「喜」のくずし字の、七十七と読める形から。
傘寿(80歳) 「傘」のくずし字の、八と十を重ねた形から。
米寿(88歳) 「米」の字をくずすと、八、十、八に分かれるので。
卒寿(90歳) 「卒」のくずし字「卆」が九十と読めることから。
白寿(はくじゅ:99歳) 「百」から横線の「一」をとると「白」になるので。
紀寿(きじゅ:100歳) 100年=一世紀を表わす「紀」から。

ほかに、百一賀(ひゃくいちが:101歳)や茶寿(ちゃじゅ:108歳)、皇寿(こうじゅ:111歳)などがあります。

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涙の味(特性)(2023/2/20)
一口に涙といっても、嬉し涙、悔し涙など、人はさまざまな涙を流します。
この涙には、それぞれ味に違いがあるそうです。
それは自律神経の働きに関係します。
例えば、副交感神経に刺激されてあふれる嬉し涙は、水分が多くマイルドな味に、
また交感神経の刺激による怒りや悔しさの涙は、Naを多く含んでいて辛口になるそうです。
人の涙は、なかなか奥が深いですね。

ところで、悲しい時や悔しい時に涙を流してスッキリした経験はありませんか。
じつは、体の中で痛みやストレスを緩和してくれる脳内モルヒネ様物質の一つ「ロイシン-エンケファリン」が涙の中で見つかっています。
涙には、痛みやストレスを和らげて洗い流す力があるのかも知れません。
厳しいストレス社会、お酒ばかりで解消しないで、我慢せずに涙を流してスッキリしてみては。

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健康食品、特に注意すべき成分(2023/2/27)
サプリメントなどの健康食品が沢山販売されています。
よく比較される漢方薬と健康食品。
健康食品は食品で、漢方薬は医薬品です。
とくに健康食品は足りないものを補うものとして気軽に使われてきました。
しかし、ドオウレン、ブラックコホシュ、プエラリア・ミリフィカ、コレウス・フォルスコリーの4つを、
厚労省が特に注意を必要とする成分又は物と指定し管理警戒しています。

健康食品を上手に使うなら、
「薬と併用しない」、
「同時にいくつもの健康食品を使わない」、
「どんなものを、どれくらいの期間、どれだけとったのかメモをつけておく」、
「体調の異常が出たら飲むのをやめて医療機関を受診する」などを挙げています。

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ポリファーマシー対策(2023/3/6)
ポリファーマシー(多剤投与)の問題は簡単なようで、なかなか難しい問題です。
代謝が衰えた高齢者となると、一つの症状に対して一つの薬では、年齢とともに薬が増えてくるのは当たり前かもしれません。
高齢者の病気は老化現象が多く、症状をとるだけで決して治っている訳ではないのです。
多少の痛みや不自由は「自然の摂理」ととらえて、仲良く我慢して付き合っていくことも大事です。
年をとったら急がないこと。

しかし、日本人は薬が大好きな国民で、「年のせい」といわれるより、医師に病名を付けてもらって薬をもらうと、安心する傾向があります。
薬の数を増やさず最小限にする提案として、漢方薬(複合症状を1つの処方でとる)を利用することをぜひ検討してみてください。

①体質を変える薬と、
②今の症状を取り除く薬の2種類で充分。
効きが悪ければ、お客様と充分話し込んで②を変えて様子をみます。

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爪で健康診断(2023/3/13)
爪はマニキュアを塗るだけのものではありません。
爪のチェックで体の健康状態がわかるのです。
爪は硬いので、骨の仲間だと思っておられませんか。
じつは、爪は角質層が変化してできた皮膚の一部です。

爪の中央がスプーンのようにへこんでいたり、上から押さえてピンク色に戻らず白いままなら、貧血のサイン。
鉄分を多くとるよう心掛けましょう。

また、爪に出る横のスジは過去の病気の名残なので、生活習慣や食生活の見直しをおすすめします。
ただし、縦のスジは病気とは関係がなく、爪の老化現象なのでご心配なく。

ほかにも、爪の中央が異常に盛り上がって指先を包み込むように伸びた「時計皿爪」には肺や心臓の病気の可能性が。
爪が急に変化したら要注意。ぜひ、医療機関を受診してください。

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漢方薬を飲む(2023/3/20)
漢方薬の服用は、一般に食前または食間(食事の2時間後)が良いとされています。
医師が処方する西洋薬(新薬:ほとんどが化学合成された物質)に食後服用のものが多いのは、
西洋薬は胃を荒らす可能性が高いからと考えられています。

食後でも胃を荒らすものは、胃薬を一緒に服用します。
そのほか、1日同程度の血中濃度を保つため、食事に関係なく、できるだけ服用を等間隔にするのが望ましいと考える専門家によれば、
朝7時に飲めば、昼は14時に、夜は21時に服用するのが良いとされています。

吸収率に関しては、お湯で溶かした漢方薬のpH(ペーハー、ピーエッチ:水素イオン濃度の表示法)および胃内のpHにも影響されることがあります。
しかし、薬は継続して飲むことが大切である点から、飲み忘れしないように心がけたいものです。

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アトピーの仕組み(2023/3/27)
佐賀大学の出原賢治(いずはら けんじ)教授らのグループが、アトピー性皮膚炎でかゆみが生じる仕組みの一つを解明。
皮膚組織に含まれるタンパク質「ペリオスチン」が知覚神経の細胞表面にあるタンパク質「インテグリン」と結合し、
脳にかゆみを伝える仕組みです。
この2つの物質の結合が阻害されると、症状が抑えられることも確認されたという将来の新薬開発にもつながる報告です。

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が主な症状で知られていますが、
ひっかくことで皮膚の保護機能が低下し、さらに症状を悪化させるというサイクルに陥りやすく、
治るのに時間がかかりやすくなります。
小児や若者に多い病気で、日本皮膚科学会ガイドラインによると、20歳以下では人口の10%程度が罹患しているそうです。

「かゆみを抑えることができれば、ひっかいて炎症を悪化させる悪循環を断つことができる」。
アトピーで悩んでおられる方の希望となる新薬の開発が待たれます。

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