2020年 令和2年はオリンピックイヤー(2020/1/6)
二味の薬対(2020/1/14)
補天立極(ホテンリッキョク)(2020/1/20)
足るを知る(2020/1/27)
敗鼓皮丸という処方(2020/2/3)
奔豚気病(2020/2/10)
鼻炎から咳へ(2020/2/17)
抗生物質の使い過ぎ(2020/2/25)
からだのリフォーム?(2020/3/2)
板藍根を使いこなす(2020/3/9)
PFAS(2020/3/16)
紫根牡蛎湯(2020/3/23)
一無・二少・三多(2020/3/30)
認知症に間違いやすい疾患(2020/4/6)
美容にも大切な三余とは(2020/4/13)
大神神社の鎮花祭(2020/4/20)
アンジー効果の是非(2020/4/27)
鉱物生薬で不老不死か(2020/5/11)
五月五日は「くすりの日」(2020/5/11)
きれい好きの功罪(2020/5/18)
明元素(めいげんそ)(2020/5/28)
暗病反(あんびょうたん)(2020/6/1)
やはり免疫しかない?(2020/6/8)
漢方の六経(2020/6/15)
夏の養生(2020/6/22)
いつまで女は家庭、男は仕事?(2020/6/30)
しびれの原因はいろいろ(2020/7/6)
七夕にホオズキの秘密(2020/7/6)
新型コロナウイルス対策(2020/7/13)
和諧(わかい)とは(2020/7/20)
いろいろなショウガ(2020/7/27)
熱中症は陰虚(2020/8/3)
熱中症の対策(2020/8/17)
一歩前進させる漢方(2020/8/25)
桂皮と桂枝の違い(2020/8/31)
苓桂朮甘湯ファミリー(2020/9/7)
秋の夜長には帰脾湯(2020/9/14)
葛根黄連黄芩湯の使い方(2020/9/23)
糖尿病の方はなぜ重症に?(2020/9/30)
日本人のコロナ死がなぜ少ない(2020/10/5)
健診と検診(2020/10/12)
自然免疫と獲得免疫(2020/10/19)
目にも五臓がある(2020/10/26)
眺めて心をいやす秋の七草(2020/11/2)
あくび(欠伸)には訳がある(2020/11/10)
冷えは万病の元?(2020/11/17)
肥満を招く食べ方(2020/11/24)
動悸の漢方(2020/11/30)
逆子(さかご)の漢方(2020/12/7)
日本人の好きな柴胡(剤)(2020/12/14)
間質性肺炎は黄芩が原因か(2020/12/21)
コロナにより世界が変わった(2020/12/28)

令和2年はオリンピックイヤー(2020/1/6)
あけましておめでとうございます。本年も「漢方つれづれ」をよろしくお願い致します。

2020年は東京オリンピックが開催されます。
東京では、二度目のオリンピックとなりますが、第1回目の1964年のオリンピックを経験した世代では、
クーベルタン男爵が唱えた「オリンピックは参加することに意義がある」という言葉が、今も脳裏に浮かびます。
昨今では、オリンピックやワールドカップなどの世界大会では、出場するための予選が大変です。
運よく参加できたとしても、次に「勝たないといけない」「メダルの数を一つでも多く」との風潮があります。
オリンピックの理想は、「人生にとって大切なことは成功することではなく努力すること」なのです。
決して相手に勝つことだけではなく、参加してその過程を楽しみ、世界の人々と平和に付き合う努力が大切なのです。

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二味の薬対(2020/1/14)
漢方処方は数種の生薬の集合体で形成されています。
10種類程度からなる処方も中心となる生薬がわかれば、自ずとその働きがわかってきます。

たとえば、柴胡(さいこ)剤は柴胡と黄芩(おうごん)のペアで胸脇苦満(きょうきょうくまん)を取り除きます。
瀉心湯(しゃしんとう)類は黄連(おうれん)と黄芩のペアで、心下痞硬(しんかひこう:みぞおちのあたりがつかえて硬い状態)を解消します。
また、甘草乾姜湯(かんぞうかんきょうとう:甘草と乾姜)や小半夏湯(しょうはんげとう:生姜と半夏)など二味だけでできた処方があります。
この二味がベースとなり、甘草乾姜湯は人参湯(にんじんとう)や小青竜湯(しょうせいりゅうとう)などを構成します、
小半夏湯から半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)やニ陳湯(にちんとう)ができます。
二味の薬対(やくつい)は、相手を最大限に引き出す、まるで一組の夫婦(ユニット)のようなものです。
二味で最も繁用され、実際良く使われているのは、痛みの芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)や便秘の大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)でしょう。

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補天立極(ホテンリッキョク)(2020/1/20)
直訳すれば「天を補い真っ直ぐたたせる」との意で、医学的には、自然の摂理を大切にしながら、患者の病気を治すこと。
病気は決して医者の力だけで治しているわけではなく、患者の持っている自然治癒力を最大限に引き出すことが大切であり、

そのために医者がいるという、幕末の名医・原老柳の考え。
漢方医学の治療原則にも通じます。
「学の洪庵か、術の老柳」といわれた人です。
あの時代に緒方洪庵をしのぐ名声を博したほどの人物でした。
治療費の支払いも変わっており、名前を書いた紙に銭を包み、水を張ったタライに入れるだけ。
時間がたつと紙は水に溶けて誰が幾ら払ったかがわからない。
貧しかろうが、金持ちだろうが、分け隔てなく治療に当たった仁医でもありました。

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足るを知る(2020/1/27)
石庭で有名な京都の龍安寺。
そのつくばい(茶庭の手水鉢)には「吾唯知足」、皆さんもよく耳にされたことのある「われただ足(た)るを知る」と刻まれています。
これは仏経の教えの「知足」です。
「足(た)るを知る者は貧しくても心は富み、足るを知らぬ者は富んでいても心は貧しい」という教えです。
物欲、食欲、性欲など人の欲望には限りがありません。
その欲を抑え、分をわきまえることの大切さを説いています。
どこかで満足しなければ幸せ(健康や富など)が訪れないということでしょう。

漢方の「実証」の概念もそれに通じるように思います。
実証が虚証より健康という時代は終わり、中庸こそ健康のベストなのではないでしょうか。
多過ぎても少な過ぎてもダメ。
今増えている生活習慣病は「足るを知らぬ者」のツケが身体に回って来ただけのように感じる次第です。

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敗鼓皮丸という処方(2020/2/3)
「叩き続けて破れた古い太鼓の皮」を使ってつくられた「敗鼓皮丸(はいこひがん)」は、「むくんだ病気」に使われたといいます。
魯迅(ろじん)の父親の病気は全身がむくみ、腹水がたまって腹が膨らむ難病でした。
このような病気を漢方では鼓腸(こちょう)といいます。
お腹が太鼓のように膨らんでいるから、破れた太鼓の皮でつくられた薬を使えば治ると考えたようです。

単なる名前からの連想に過ぎない漢方薬を、高名な漢方医でさえ処方する中国に、魯迅は失望しました。
腹水には、昔から小豆や鯉などをよく用い、処方としては、赤小豆鯉魚湯(せきしょうずりぎょとう)などがあります。
現在では、補気建中湯(ほきけんちゅうとう)という服用しやすいエキス剤が小太郎漢方製薬から発売されています。
このような腹水でお困りの方には、ぜひ一度お試しいただきたいと存じます。

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奔豚気病(2020/2/10)
ヘソのあたりから何か球のようなものが胸に向かって突き上げてくる。
それが数秒で胸に達すると、脈が早くなり、胸苦しさを訴える。
しばらくすると元に戻るが、発作の時には、不安で立っていられなくなり、失神しそうになる。
これが漢方でいう奔豚気病(ほんとんきびょう)です。
まるで子豚が腹の底から胸に突き上げてくるようなので、このように呼ばれています。
気逆(きぎゃく)の一種で、パニック障害やヒステリーなどによく似ています。

漢方では奔豚湯(甘草、川芎、当帰、半夏、黄芩、葛根、芍薬、生姜、李根皮)や、
苓桂甘棗湯(りょうけいかんそうとう:小太郎漢方製薬にエキス剤あり)が用いられます。
現代医学では精神安定剤を中心に治療にあたります。

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鼻炎から咳へ(2020/2/17)
花粉症の季節です。鼻炎に苦しめられている人がたくさんおられます。

かつて、鼻炎といえばちくのう症が多かったものです。
現在は副鼻腔炎(ふくびくうえん)といいます。
症状は粘り気のある鼻汁、鼻づまり、頭重など。
これが慢性化すると、後鼻漏(こうびろう:鼻汁が鼻の奥からノドに落ち込む)、咳、痰、微熱などを引き起こします。
こんな時には、咳を治すよりも鼻炎を治すことが先決。
したがって、葛根湯加辛夷川芎(かっこんとうかしんいせんきゅう)や辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)を使います。
花粉症を合併して副鼻腔炎を起こしている方にも用いられます。

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抗生物質の使い過ぎ(2020/2/25)
最近では、かぜの治療に抗生物質を出さなくなりました。
以前はかぜといえば必ずと言っていいほど解熱剤や鎮咳剤、抗ヒスタミン剤などと一緒に出されていました。
抗生物質は肺炎などを起こす病原菌には効果がありますが、かぜの原因であるウイルスには効かないからです。

感染症の予防として、今も抗生物質が使われていますが、抗生物質は腸内細菌に影響を及ぼすため、体に必要な菌まで殺してしまう恐れがあります。
これを使い過ぎると薬剤耐性菌ができるため、いざ必要な時に効かず、
高齢者を中心に8000人を超す日本人が毎年死亡しているとニュースになりました。
そんな時、漢方の抗生物質といわれる荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)が重宝します。
殺菌効果があり、耐性菌をつくらないからです。

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からだのリフォーム?(2020/3/2)
物を大切にする。大事に扱う。
いわゆる「もったいない」精神からか、衣類をリフォームして使う、
家電などの故障もすぐに買い替えずに、直して使うなど、景気が低迷する頃は、このような修理屋さんが繁盛するようです。
考えてみれば、我々薬屋もそもそも、からだの修理(修復)に必要な物質を提供しているに過ぎません。
特に、体の器官は機械のように簡単に取り換えがききません(これからはiPS細胞を使った再生医療で取り換えがきくかもしれませんが…)。
だからこそ、年相応、体力相応という考えに立って、その状態にふさわしい生活に変えていく養生が大切です。

かけがえのない私たちの体、年をとったら無理をせずマイペースで、ボチボチいきたいものです。

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板藍根を使いこなす(2020/3/9)
中国では、抗菌抗ウイルスの働きで知られている板藍根(ばんらんこん)は、
藍染めに使われる藍と同系統のアブラナ科のホソバタイセイの根です。
漢方の薬能では、清熱解毒(せいねつげどく)薬に分類され、熱を冷まし炎症を取る作用があります。

この処方は次のような方にオススメです。
①風邪をひきやすい方
②よく熱が出たり、ノドが腫れやすい方
③口内炎やヘルペスができやすい方
④細菌性の下痢で、おなかをこわしやすい方
⑤ニキビやお肌の出来物がよく化膿する方などに、基本となる処方と併用して用いられます。

たとえば、①の場合には玉屏風散。②や⑤の場合には荊防敗毒散。
③や④の場合には黄連解毒湯というように。
また、最近では、口腔内細菌を抑える働きから歯周病などにも応用されています。

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PFAS(2020/3/16)
花粉症の人が果物や野菜を食べるとノドがイガイガする、唇がはれる、口の中がヒリヒリするなど
口周辺に症状が現れる場合、PFAS(Pollen-Food Allergy Syndorome花粉-食物アレルギー症候群)と考えられます。

花粉症のアレルギー反応は、鼻や目から体内に入った花粉を追い出そうとして抗体が作られ、
その抗体が花粉とくっつくことで鼻や目が刺激されます。
ではなぜ果物や野菜を食べると症状が出るのでしょうか。
それは花粉症の原因物質と似たタンパク質が果物や野菜に含まれているからです。
花粉はスギやヒノキだけではなく、年中何らかの花粉が飛んでいます。
スギやヒノキだとトマト、イネなどではメロンやスイカで起こりやすいようですが、加熱すれば大丈夫だと言われています。

※ただし、大豆(特に豆乳、もやし)では加熱してもアナフィラキシーを起こす可能性があります。
 食材によっては注意が必要です。

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紫根牡蛎湯(2020/3/23)
紫根牡蛎湯(しこんぼれいとう)をご存知でしょうか。
紫根牡蛎湯は、無名の頑瘡(がんそう:病名がわからないが、手足や顔、胸背などにできて、なかなか治らない皮膚病、
リンパ・乳腺の腫物、膿瘍などをさす)によく使用される漢方処方です。
頑瘡はすぐには治らない、治ってもよく再発する、繰り返し起こり慢性化するといったたちの悪いものです。
そのような腫物に対して著効を示すのが紫根牡蛎湯です。

この処方の主薬である紫根(シコン)は、その昔、王侯貴族しか用いることができない高貴な色で、庶民には高嶺の植物であったムラサキです。
紫根の植物名ムラサキは「群れ咲き」がなまったもので、この名から紫色という言葉ができたそうです。
このシコンは、コウカ(紅花)、アイ(藍)とともに、日本三大色素のひとつです。
紫根は塗っても(紫雲膏:シウンコウという軟膏にも配合)、飲んでも役く立つ貴重な薬草です。

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一無・二少・三多(2020/3/30)
元気で長生きするには「一無・二少・三多」が肝要です。

「一無」は、タバコは吸わない。
喫煙の習慣は、ストレスを解消したり、ダイエットに適しているという方もおられますが、煙を体内に入れるのは、百害あって一利なし。
特に周りの害(副流煙の害)は計り知れません。

「二少」は食事と酒量のこと。
どちらも程々にできれば、体にとってこれほど素晴らしいものはありません。
欲の強い人間にとってはセーブが必要です。

最後に「三多」は「多動、多休、多接」です。
「多動、多休」はたくさん動いて、たくさん休むことです。
多動でないと多休とはいかないでしょう。
「多接」とは多くの人や物に接して創造的な生活をすること。
人はひとりでは生きていけませんので。

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認知症に間違いやすい疾患(2020/4/6)
80歳以上で腰の痛みがある人は、痛みがない人に比べて認知症になるリスクが半分になるそうです。
80歳以上で腰の痛みを感じること自体が、脳の機能を維持できている証拠でもあります。

認知症のように見えても認知症ではない場合がたくさんあります。
よく言われるのは「加齢に伴う物忘れ」です。
たとえば、朝食で何を食べたか思い出せないなど記憶の一部を忘れてしまうのに対して、
「認知症による物忘れ」では朝食をとったこと自体を忘れてしまうのです。

そのほか、うつ病やせん妄、甲状腺の機能低下などがあります。
認知症とされた人の2.6%が甲状腺の機能が低下していたとの報告もあります。
心配な方は、しっかり検査を受けて、早めに治療を受けましょう。

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美容にも大切な三余とは(2020/4/13)
漢方では、髪・歯・爪をそれぞれ、血・骨・筋の余りと考えます。
それらをあわせて三余(さんよ)と呼びます。

まず髪は「血余(けつよ)」といわれ、血液の一部と考えられています。
貧血などで血液が不足すれば、体の末端にある髪の毛まで血液がまわらず、髪は細くなってコシがなくなり、抜けたりします。

次に歯。体から唯一露出しているとされている骨ですが、歯が丈夫なら全身の骨格も丈夫です。
「腎(じん)は髄(ずい)を生じ、骨を主り、歯は骨の余り」といわれるように腎の働きとかかわっています。

最後に爪。その半透明で硬い質感から、爪を骨の一部と勘違いしている人が多いようですが、実はケラチンというタンパク質です。
別名「筋余」ともいわれる爪は、その構成成分から筋や皮膚に近く、これらが角化したものと考えられています。
「肝は筋を主る」といわれるように、肝(かん)が健康でないと爪がデコボコになったり、
もろくなったり、爪の色が白っぽくなったりするのです。

このように漢方では見た目でその方の体質を診る「望診(ぼうしん)」というものも大切にしています。

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大神神社の鎮花祭(2020/4/20)
花見の季節は過ぎてしまいましたが、季節柄「花」のつく行事が多い4月です。
桜が散る季節に合わせて行われるのが「鎮花祭(はなしずめのまつり)」です。

かつて桜が散る頃、花びらにのって疫病が蔓延し、人々を悩ませたことに始まります。
この疫神を鎮めるために行われたのが鎮花と言われ、起源は大和時代にさかのぼります。
特に奈良県の大神神社(おおみわじんじゃ)の鎮花祭が有名で、薬業関係の方々がたくさん参詣されます。
大神神社は、あの古代ロマン(記紀・万葉)の世界へ誘う「山の辺の道」の桜井側にあります。
日本最古の神社で、後ろにそびえる「三輪山」がご神体です。
最近はパワースポットとして若い方にも人気があります。
疫病との闘いは大和時代から続いています。

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アンジー効果の是非(2020/4/27)
将来がんになるリスクを下げるため、HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)の患者が受ける予防切除(がんになっていない部分をとる)。
その1年間(2018.9~2019.8まで)の手術件数が、乳房切除は85人、卵管・卵巣切除は175人と発表されました。
HBOCの女性が生涯で乳がんになるリスクは40~90%と、日本人女性全体の9%に比べて高くなっています。
また、卵巣がんになるリスクは20~60%となるそうです。

かつて米女優のアンジェリーナ・ジョリーさんがこの手術を受けて話題になり、米国では希望者が急増したそうです(アンジー効果)。
賛否両論あるようですが、HBOCの女性にとって将来のリスクを排除できるかもしれない選択が自分でできる時代になってきていることは
間違いないでしょう。

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鉱物生薬で不老不死か(2020/5/11)
古代人は自然界の恵みを口に入れて、薬効を調べました。
その色や形、味、生育地などからどのような働きがあるかを推測したと言われています(いわゆる象形薬理)。
精神安定に働く鉱物生薬に竜骨や牡蛎などがありますが、象形薬理的にいうと、重いものは気を鎮めて落ち着かせます(重鎮安神薬)。

また、鉱物生薬は、不老不死の薬でもありました。
腐ったり変質する植物・動物生薬と違い、鉱物は永遠に変わらぬ姿を保つため、神仙薬として重宝されたのです。
中国の皇帝は、これが長寿につながると考えて、積極的にとり入れたそうです。
その中の雄黄(ゆうおう・一部ヒ素化合物を含む)や丹砂(たんさ・一部水銀化合物を含む)など逆に毒性があり、
命を落とすものさえあったと言われています。

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五月五日は「くすりの日」(2020/5/11)
1400年前の5月5日に推古天皇が薬草採集したことから、日本書紀に「くすりの日」として記録されています。
鹿の角袋(鹿茸)を取るために鹿狩りをする風習が中国から朝鮮半島を経て我が国へ伝わったものです。
鹿は何千年も生きるとか、一頭の雄鹿が何百頭の雌鹿を従えると信じられ、鹿の角や肉が不老長寿や強精薬として珍重されていました。

この「くすり狩り」はやがて生き物を殺すことを禁じる仏教の影響で、薬草を採集することのみを指すようになりました。
宮廷の大切な行事のひとつでもあります。
端午の節句(5/5)を境に、気候が急に暑くなり、病気にかかりやすくなるため、
菖蒲、ヨモギを軒に挿し、ちまきや柏餅を食べて邪気を払う習慣ができたそうです。

日々の気温差が激しい現代にも通じることですね。

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きれい好きの功罪(2020/5/18)
日本人は元来きれい好きな国民です。
免疫の世界では、細菌やウイルスを撃退する命令を出すTh1とそれ以外の異物を撃退するTh2(どちらもT細胞)があります。
日本では、戦後の高度成長とともに衛生環境も整ったため、細菌やウイルスの危険にさらされることが激減しました。
その結果、Th1が使われなくなりTh2が増え、アレルギー病が増えたと言われています。

Th1を増やすには昔のように子供に泥んこ遊びをさせたり、納豆やヨーグルトなどの発酵食品をとったりすることがよいようです。
また、ある種の漢方薬を服用させるということもあるようです。
私たちの身の回りにはいろいろな共生菌がいて、人間を守ってくれています。
清潔志向の行き過ぎが、共生菌まで排除し体のバランスを崩しました。
アレルギーなどの現代病はそのつけが回って来たものです。

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明元素(めいげんそ)(2020/5/28)
明るく、元気で、素直に、という意味からつくられた熟語が明元素です。
明るくて元気がでる、顧客に好印象を与え、現状を打破する言葉でもあります。
景気が悪く、暗い時代にはもってこい。
わたくしどもを含め、商売に携わる人には明元素を使って、明るく振舞っていきたいものです。

「ありがとう。お元気さま。充実している。頑張ります。簡単だ。おもしろい。できる。素敵だ。楽だ。
やれる。金がある。美味しい。まだ若い。きれいだ。努力します。利口だ。幸せだ。やってみよう。楽しい。
元気だ。素晴らしい。試みる。イケル。可能だ。美しい。うれしい。挑戦します」
このような言葉を常に発して、気持ちを切り替えておくと、
家(店)は明るくなり自然とお友達(お客様)が集まってきます。

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暗病反(あんびょうたん)(2020/6/1)
前回の明元素と反対に、暗くて病的で反抗的という意味からつくられた熟語が暗病反です。
暗くて否定的な言葉の暗病反はできるだけ使わないようにしたいものです。
現状を維持する言葉でもあり、進歩がありません。

「忙しい。疲れた。どうせ。どうでもいい。やってられない。難しい。つまらない。できない。いやだ。困難だ。
ダメだ。金がない。まずい。もう年だ。きたない。どうしよう。バカヤロー。不幸だ。やりたくない。おもしろくない。
困った。マイッタ。苦しい。つらい。失敗した。わからない。大変だ」
このような言葉ばかりを並べていると、気持ちが沈んで益々暗くなってきます。
病気にかかっている方と接する機会が多い医師や薬剤師の方々は意識して使わないことも必要なのではないでしょうか。
治療成果にも影響するのではないかと思うのです。

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やはり免疫しかない?(2020/6/8)
新型コロナウイルスに感染して、治療薬もなく、患者数が拡大していく中で、
やはり各自の免疫力に期待するしかないのでしょうか。

免疫とは疫(感染症)を免れるとの意で、免疫細胞には白血球やマクロファージ(自然免疫)と抗体(獲得免疫)などがあります。
これらの細胞を単に増やすだけではなく、このシステムがバランスよく働くことが大切です。

免疫系の働きをよくする生活とは、まずはストレスをためない。
2番目は何か運動をする。
3番目に酒やタバコを止める。
4番目は充分な睡眠をとる。
最後に栄養バランスのとれた食事をする。
すなわち、誰にでもできる規則正しい生活をすることなのです。

漢方薬で免疫力を高めてくれる処方といえば、玉屏風散(ぎょくへいふうさん)がこれに匹敵します。
※玉屏風散については、漢方つれづれ2019年1月25日(月)『病人を治す漢方』
 2019年4月22日(月)『花冷えに玉屏風散』なども併せてお読みください。

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漢方の六経(2020/6/15)
漢方の出版物が少なかった時代、漢方の大家・大塚敬節(おおつかけいせつ ※本名:よしのり)先生は
師匠に当たる湯本求真(ゆもときゅうしん)先生から漢方の入門書として次の6冊を勧められたそうです。
・尾台榕堂(おだいようどう)著『類聚方広義(るいじゅほうこうぎ)』、『方伎雑誌(ほうぎざっし)』
・稲葉文礼(いなばぶんれい)著『腹証奇覧(ふくしょうきらん)』
 (和久田叔虎(わくたしゅくこ)著『腹証奇覧翼(ふくしょうきらんよく)』)
・永富独嘯庵(ながとみどくしょうあん)著『漫游雑記(まんゆうざっき)』
・有持桂里(ありもちけいり)著『方輿輗(ほうよげい)』
・吉益東洞(よしますとうどう)著『薬徴(やくちょう)』

もちろん、漢方の古典である『傷寒論(しょうかんろん)』や『金匱要略(きんきようりゃく)』は外せませんが、
この2冊のほかに6冊を熟読すれば、いろいろな古典を渡り歩かずともよいとのことです。
江戸時代の武士の教養として四書五経(ししょごきょう)がよく読まれました。
まさに漢方の四書五経に匹敵するものです。

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夏の養生(2020/6/22)
高温多湿の蒸し暑い夏がやって来ました。
『黄帝内経(こうていだいけい)』では、夏は草木が成長し、万物が茂り花咲き乱れ、陽気が最高潮に達する季節として、
その養生を説いています。

①少しは夜更かしをしてもよいが、朝は早く起き、日中が長いからといって怠けない。
②適度に運動して、1日1回は汗をかく。
③精神的にも気分を発散する。

暑いからといって、汗をかかなかったり、冷たいものや冷房ばかりに頼っていると、熱が体にこもり心臓に負担がかかります。
これを夏中続けていると下痢をし、秋には咳で苦しめられます。
夏は体の水分が減る(消化管の中は水浸しでも細胞自体は水分不足)ので、
生脈散(しょうみゃくさん)や清暑益気湯(せいしょえっきとう)などで補陰(ほいん:水分を補うこと)を忘れないようにしましょう。

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いつまで女は家庭、男は仕事?(2020/6/30)
20代前半の女性は男性とほとんど変わらない賃金を得ているのに、30代に入ると男性の8割ほどになります。
非正規雇用の割合が男性の2倍に上り、管理職も少ないため、女性の賃金は男性より16%低く、
男女の賃金格差は年齢が上がるほど大きくなります。
日本における男女格差(ジェンダーギャップ)は世界でも問題になっています。
その上、女性には命にかかわることもある妊娠・出産が待ち受けています。
また、子育てのための授乳は心臓へのストレス(周産期心筋症になりやすい)が多大という最近の報告もあります。

ジェンダーギャップに疲れた時は、漢方で心身を整えて、癒してあげませんか。
がんばる女性を応援する漢方薬「芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)」がおすすめです。
21種類の生薬が働く女性や母親の体や心にやさしく働きかけ、
血液の流れをよくしてホルモンバランスを回復してくれる理想の漢方薬です。

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しびれの原因はいろいろ(2020/7/6)
一般に、しびれと言うと正座をした後の足のしびれを思い浮かべるでしょう。
正座の後、はじめは自分の足に触っても足には手が触れている感覚がありません。
足の感覚がなくなっている感じです。
しばらくすると足はビリビリと痛いようなくすぐったいような異常感覚に襲われます。
その感覚が薄れるにつれて足の感覚は戻ってきます。

しびれは、脳梗塞や脳腫瘍のような脳の病気に思われがちですが、「しびれ」→「痺れ」→「痺証(ひしょう)」から想像して、
血の循環障害が原因で起こっているようです。
痛みよりしびれが顕著な場合は、その病気は治りにくく、長引く恐れがあります。
漢方では、頑証(がんしょう:頑固な痺証)と考えて独活寄生丸(どっかつきせいがん)を用います。

コロナウイルスの影響で、ステイホーム(家に居よう)が呼びかけられる中、いつものように体を動かせず、
血行が悪くなり、足腰の痛みやしびれなどの不調が増幅しているという方も少なくないかもしれません。
家の中でできる簡単な運動を無理のない範囲で行ってみるのも血の循環を良くするためにもよいでしょう。

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七夕にホオズキの秘密(2020/7/6)
7月といえば七夕。この頃、田の草取りの最中で重労働が続き、
しかも蒸し暑くて体力の消耗が激しく、休養日(農業節句)として、七夕は考え出されたようです。
農業は重労働ですので、女体保護という観点から、七夕にはホオズキ(鬼灯)の根を煎じて飲む風習があったようです。
この根(酸漿根:さんしょうこん)には緩下作用のほか利尿、解熱、咳止めなどの効があります。

しかし、飲み過ぎると堕胎する恐れもあり、妊婦には要注意です。
笹にホオズキを下げる風習が今でも西日本に残っているそうです。
ホオズキの根を煎じて飲むことが、実を下げて祭ることに変わっていったようです。

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新型コロナウイルス対策(2020/7/13)
令和2年もほぼ半分が過ぎました。
今年の正月は、東京オリンピックイヤーの幕開けで、盛り上がっていましたが、
その後は、新型コロナウイルス感染症の拡大でパンデミック(世界的大流行)になり、社会が一変しました。

漢方では、この感染症は湿毒疫(しつどくえき)といわれ、湿性の特徴を備えているため、
はじめ穏やかで進行が遅いが、熱と結びついて毒性が高まると急に悪化します。
軽症、中等症の治療としては、中医学の清肺排毒湯が適しているようです。

エキス剤で代用するなら、麻杏甘石湯、胃苓湯、小柴胡湯加桔梗石膏の3つを服用すればよいとの報告があります。
また、温病に近いと考えられるので、銀翹散に麻杏甘石湯を合わせ、
さらに清熱の板藍根を加えてもよいともいわれています。

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和諧(わかい)とは(2020/7/20)
和諧という言葉をご存知でしょうか。和解(仲直り)ではありません。
和とは、「和睦」すなわち心を合わせて助け合う。
諧とは、「協調」すなわち衝突がないことです。

明治以降に日本の医学は、漢方から蘭方(西洋医学)に取って代わりました。
それ以降、紆余曲折があり、昭和になって漢方が蘇りました。
「漢方と西洋医学の和諧を願って…」とは、単なる東西医学の調和という意味にとどまらず、
異なる2つのものが両立して、互いに生かし生かされることを目指したすばらしい言葉です。

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いろいろなショウガ(2020/7/27)
夏の健康食品・ショウガ。
漢方では、修治(しゅうち:蒸したり炒めたりの加工)により名前が変わります。
また、日本と中国では呼称が違うため注意が必要です。

中国で生姜(しょうきょう)といえば、八百屋で売っている生のヒネショウガ。
日本では、これを鮮姜(せんきょう)といいますが、薬用としては、この生の生姜(鮮姜)は用いず、
天日で乾燥した生姜(生姜の重さの1/3~1/4でよい)を用います。

しかし、中国ではこれが乾姜(かんきょう)となります。
日本の乾姜は蒸した後に乾燥したものを指し、全体が飴色の角質になります(黒姜:こくきょう)。
中国では、これに近い状態に加工したものは、炮姜(ほうきょう)と呼ばれるのです。

それぞれ薬能が違い、生姜(しょうきょう)は解表(げひょう)・止嘔(しおう)、
乾姜(かんきょう)は温裏・補陽(おんり・ほよう:体を中から温める)で、
小太郎漢方製薬の商品では、すべて使い分けをしております。

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熱中症は陰虚(2020/8/3)
今年の夏は、コロナ禍の影響で、熱中症対策に苦労されている方が多いのではないでしょうか。
また、新型コロナ感染症と熱中症の症状が大変似ているため、それがストレスにもなります。
外出時はマスクをしているため、熱がこもり、息苦しくなります。
そして、体の疲れがいつまでもとれません。
特に高齢者では、ノドの渇きを感じにくく、気付けば重症になっていることも少なくありません。

熱中症の軽症では、めまいや足がつる。
症状が進めば、だるさ、吐き気や頭痛が起きます。
漢方ではこのような状態は、腎の陰虚と考えます。
脱水で陰液(血液や水)が減り、体温(体の熱)を下げられなくて、意識障害に発展することも。
寝苦しい夏ですが、たっぷり睡眠をとって、清暑益気湯や生脈散などでケアしてください。

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熱中症の対策(2020/8/17)
熱中症の症状の一つに脱水症状があり、高齢者の中には、1日2Lの水を飲むことを心掛けている方がいらっしゃいます。
しかし、これでは、漢方でいう「水毒」になってしまいます。
不足分の水を摂れば、すべて体に保持できると思いがちですが、そんな単純なものではありません。

体液より薄い水は摂ってもすぐに尿や汗に変わり、体外に放出されてしまいます。
したがって、体の細胞は潤わず、潤うのは胃や腸管ばかりで、おなかがチャプチャプ(水毒)するだけです。
ですので、熱中症対策の水分補給ということであれば、塩分やミネラルを含んだ水分を摂ることを心がけましょう。
中でもミネラルを含む麦茶がよいでしょう。
同じお茶でも緑茶やコーヒーなどカフェイン飲料は利尿に働いてしまうため注意が必要です。
そのほかには飲む点滴といわれる甘酒(米麹)などもよいでしょう。

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一歩前進させる漢方(2020/8/25)
ガン治療などで医師が「やるべきことは、すべて試みました。打つ手はありません」と言うのをドラマ、
あるいは実生活で聞いたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。
この打つ手がなくなったというのは、西洋医学の分野で治療法がなくなったということです。
「後はお好きな治療を、本人が満足されるまでお試しください」と言われたらどうでしょうか。
漢方などの伝統医学に目を向ければ、まだまだ方法があるかもしれません。
とはいえ、漢方はエビデンス(科学的根拠)が乏しいものです。
しかし、乏しいということはイコール効き目がないということではありません。
視点を変えれば、道が開けることがあります。

西洋医学は「治し」の手段で、漢方は「癒し」も兼ね備えた手段ではないかと感じるのです。
後者は治った治らないの二極化では計れないもの。
とにかく一歩前進させ、気分転換を図ることも大切なのではないでしょうか。

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桂皮と桂枝の違い(2020/8/31)
桂皮(けいひ)も桂枝(けいし)もクスノキ科の常緑高木で、基原植物は同じです。
・桂枝は若い細枝またはその樹皮(直径1㎝以下の枝を切断)。
・桂皮は木の幹の皮(一定の幅で剥ぎ取ったもの。肉桂(にっけい)とも呼ばれる)。
このように部位が異なれば、成分や効能も違ってきます。

桂枝は、桂皮に比べ作用は穏やかで、解表(げひょう:体表部を温める)作用を持ち、
麻黄(まおう)や生姜(しょうきょう)などと同じ分類に入ります。
発汗を目的にする処方である葛根湯(かっこんとう)や麻黄湯(まおうとう)に用いる場合に適しています。
一方、桂皮(肉桂)は作用が強く、温裏(おんり:体内から温める)薬に分類され、
附子(ぶし)や乾姜(かんきょう)と同じ仲間です。 処方の性質上、八味地黄丸(はちみじおうがん)や
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などに用いる場合に適しています。
日本では、区別しないことが多く、局方品は桂皮しかありませんので、桂皮しか使えません。

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苓桂朮甘湯ファミリー(2020/9/7)
世の中には、宵っ張りの朝寝坊であるフクロウ型人間がおられます。
朝が苦手なスロースターターで、飲食も夜型で、水分の代謝が悪く、朝方まで水毒が残り、起きられない方です。
こんな方には、漢方の世界では苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)が適します。
水毒証なので、胃内停水があったり、尿量減少して口が乾いたり、臥蚕(がさん:目の下の膨らみ)がでやすいなどの特徴があります。

苓桂朮甘湯には、いろいろな合方(あるいは加味方)があります。
四物湯(しもつとう)と合方したものが連珠飲(れんじゅいん)です。
貧血によって起こるめまい、動悸、耳鳴りなどの上半身の不定愁訴に効果があります。
また、これに呉茱萸(ごしゅゆ)、牡蛎(ぼれい)、李皮(りひ)を加味した定悸飲(ていきいん:動悸改善が得意)。
車前子(しゃぜんし)、細辛(さいしん)、黄連(おうれん)を加えたのが
明朗飲(めいろういん:目全般によい)です。

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秋の夜長には帰脾湯(2020/9/14)
立秋が過ぎ9月になっても、暑くて眠れぬ夜がありますが、秋が深まり、
過ごしやすい気候になっても、夜眠れないという場合は、薬の助けが必要かも知れません。
そんな時には、漢方が最適です。
興奮しやすく、フトンに入っても、寝つきが悪いタイプでは、入眠障害と考え、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)が適しています。
黄連解毒湯は清熱剤であり、興奮して発生した熱を冷ますことで改善してくれます。

一方、寝つきは悪くないが、すぐに目が覚めてしまって、睡眠を長く維持できない、
熟眠障害であれば帰脾湯(きひとう)を用います。
熟睡感がない、性格的に心配性で、睡眠を維持する血の消耗が激しい方です。
入眠障害と熟眠障害の両方があるのなら加味逍遥散(かみしょうようさん)が向いています。

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葛根黄連黄芩湯の使い方(2020/9/23)
葛根黄連黄芩湯(かっこんおうれんおうごんとう)は『傷寒論』(しょうかんろん)の太陽病中篇に出てくる処方です。
太陽病(発汗など発表して治療する)を誤って下した結果、下痢が止まらなくなった状態に使います。
この下痢は人参湯(にんじんとう)を使うような泄瀉(せっしゃ:慢性下痢)ではなく、
粘液便でしぶり腹を伴う痢疾(りしつ:感染性下痢)に使われることが多いです。
ノロやロタウイルスなどの感染による下痢です。
人参湯で治る下痢は、早く止めることが大切です。
そうしないと、栄養が身につかず、太れません。

一方、痢疾は炎症性で、細菌がおなかに残ることがあるので、すぐには止めない方がよいとされています。
そして、腸にある熱が上昇して、頭部や皮膚に昇った結果、
目や口にくすぶった炎症を起こすもの(口内炎、充血性眼病)にも応用されます。
解表薬(辛涼)の葛根が有効に働いています。

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糖尿病の方はなぜ重症に?(2020/9/30)
糖尿病は感染症にかかりやすい病気です。
その原因は高血糖による免疫力の低下と血流障害です。
免疫の中心は白血球の働きで、中でも好中球(こうちゅうきゅう)は直接ウイルスや細菌を食べて処理します。
高血糖では好中球の働きが低下します。
リンパ球の抗体産生も障害されます。
糖尿病を持った高齢者にコロナ感染が起こると、血糖値が悪化し、全身の動脈硬化と高血糖により血液の流れが悪くなります。
末梢組織で血流が悪くなると、白血球がウイルスや細菌を攻撃できなくなるだけでなく、
血液内の栄養や酸素、薬の移行も不充分になります。

その結果、肺炎だけでなく、血管に血栓ができやすくなり、呼吸状態が急激に悪化します。
心臓や腎臓にも影響を及ぼし、重症に陥ります。

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日本人のコロナ死がなぜ少ない(2020/10/5)
① BCGは「訓練免疫」という仕組みで人体に備わっている自然免疫を活性化させ、重症化抑制に寄与している可能性がある。
② 交差免疫(過去に新型コロナと似たウイルスに感染した可能性)も働いているが、重症化を抑える貢献度の大きさは正確にはわかっていない。
③ 遺伝子の差異も因子の一つだが、同じアジア人でも住む場所によって重症化に違いがあり、決定要因ではない。
④ アジアの方が肥満や生活習慣病の程度が欧米より低く、重症者の数を抑え込む因子の一つ。

など
「一つが決定的に重要というより、BCG、交差免疫、遺伝子などの因子が相互補完的に働き、重症化率を大きく押し下げている」と
大阪大学の宮坂昌之教授が分析されています。

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健診と検診(2020/10/12)
健診と検診の違いをご存じですか?
どちらも病気予防のため行うものですが、健診は「健康診断」のことで、健康かどうか調べ、病気の危険因子を早く見つけることです。
予防医学でいう「一次予防」となります。

一方、検診は「がん検診」「歯科検診」などのように特定の病気を早期に発見して早く治療するための「二次予防」です。
すなわち、一次予防は病気にならないようにする生活習慣の改善や予防接種のようなもので、
二次予防は、病気になってしまった人を早期発見、早期治療することです。

また、病気になってしまった人の後遺症の進行を防ぐリハビリのようなものを
「三次予防」と呼ぶ場合もあります。
「自分の健康は自分で守る」漢方治療の本質にも通じます。

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自然免疫と獲得免疫(2020/10/19)
抗体だけが免疫ではありません。
なぜなら、自然免疫だけでウイルスを排除できる人もいるからです。
免疫イコール抗体という考えは古い概念かもしれません。
なぜなら、新型コロナウイルスでは、抗体は免疫の中であまり大きな役割を担っておらず、
回復した人の1/3はほとんど抗体を持っていなかったからです。

自然免疫で排除できなければ獲得免疫が活動します(自然免疫が警察なら獲得免疫は軍隊のように強大)。
自然免疫では白血球の一種である食細胞が病原体を食べてくれます。
獲得免疫はさらに強力ですが発動までに数日かかります。
Tリンパ球とBリンパ球が協力して抗体をつくります。

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目にも五臓がある(2020/10/26)
目は「眼睛(がんせい)」といい、漢方の概念では、五臓(六腑)と密接な関係にあります。
「目と五輪学説」では、肺は結膜や強膜で気輪(きりん)、肝は角膜や虹彩(こうさい)で風輪(ふうりん)、
腎は瞳孔で水輪(すいりん)、脾は上下の眼瞼(まぶた)で肉輪(にくりん)、
心は内・外眼角(ない・がいがんかく)の毛細血管で血輪(けつりん)といい五臓行に関わります。

たとえば、肝血が虚すと、目を滋養できず視力が衰え、白内障や夜盲症(やもうしょう)、さらに緑内障に。
心は循環により栄養を与えるが、乾燥して目がショボショボし、視力減退、目が充血する。
脾は気が充分でないと眼瞼下垂や眼瞼浮腫になりやすい。
肺では皮毛の衛気(えき)が不足すると外邪(がいじゃ)に刺激されて目が赤くなり、結膜炎になりやすい。
腎は脳に通じ、それが空虚になれば、目の精気が不足し、視力も低下し、
水分代謝異常で、網膜浮腫や白内障になります。

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眺めて心をいやす秋の七草(2020/11/2)
七草といえば一般に正月7日の七草粥(ななくさがゆ)に用いる早春の天然野草です。
七草粥には邪気を払い万病を除く呪術的な意味ばかりでなく、おせち料理で疲れた胃腸を休め、
野菜が乏しい冬場に不足しがちな栄養を補うという薬膳粥の目的もあると言われています。

一方、秋の七草には、ハギ(萩)・キキョウ(桔梗)、クズ(葛)・フジバカマ(藤袴)、
オミナエシ(女郎花)、オバナ(尾花 ※ススキのこと)・ナデシコ(撫子)があります。
山上憶良(やまのうえのおくら)が万葉集で詠んだ
「秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花」が由来です。
花野を散策して歌を詠むことが、古来より行われていました。
秋の七草は、それを摘んだり食べたりするものではなく、草花を愛でて心を癒すものです。

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あくび(欠伸)には訳がある(2020/11/10)
秋の夜長、寝不足で日中あくびを連発した経験はありませんか。

漢方の世界では、あくびは心に潤いがなくなり、緊張している証拠と考えます。
甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)という甘い食品のような漢方薬を用います。
人は脳が疲れた時、思考が堂々めぐりしている時にあくびをします。
あれは「つまらない」という気分の現われではありません。
あくびが脳を活性化しているのです。
あくびをすると上顎(じょうがく)と下顎(かがく)を大きく開くことになります。
その動作が脳を刺激します。単に酸素を脳に送るという生理的メッセージだけではありません。
顎(あご)を動かすことで脳の体性感覚野に直接刺激を与えて、脳を活性化しています。
つまり、「がんばれ」というエールを顎が脳に送っているのです。

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冷えは万病の元?(2020/11/17)
石原結實(いしはらゆうみ)著『病は冷えから』では、「体を温めれば病気は治る」とあり、
あらゆる病気の原因に冷えが関わっていると唱えています。
漢方家の中にも「冷え」を病気の元凶ととらえ、治療に応用されている方も多くいらっしゃいます。
冷えは漢方では寒証(かんしょう)ととらえ、立派な病気です。

寒証には、虚寒(きょかん)と実寒(じっかん)があります。
一般的に冷え症体質や寒がりは虚寒で、実寒は寒い環境に長くいたり、冷たい物をたくさん取ったりしたために起こる一時的な冷えです。
冷えにより体の新陳代謝が衰え、当然のごとく免疫機能も弱り、
物が硬くなる(寒凝(かんぎょう)※冷えると硬くなる)といいます。
感染症の発熱すら体が病原体と戦っている、よい兆候であるととらえます。
また、難病といわれるガン(岩のように硬い腫瘤)も温めることでよい方向に向うこともあるという考え方です。

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肥満を招く食べ方(2020/11/24)
食欲の秋。食べ方ひとつでも肥満予防につながります。

肥満になる食べ方の1つ目は、まとめ食いです。
欠食や不規則な食事で腹が減り過ぎると、食べ過ぎになり、多めに吸収されます。
太るのが修行のお相撲さんの食べ方がまさにこれです。

2つ目は、ながら食いです。
テレビを見たり、本を読んだりしながら食べると、食べた量がわからなくなり食べ過ぎの原因となります。

3つ目は、早食いです。早く食べると、満腹中枢が追いつかず、意外に多く食べてしまいます。
予防策としてよく噛んでゆっくり食べることです。

4つ目は、やけ食い(気晴らし食い)です。食べ過ぎの最たるものです。
食べることで、不満やストレスを解消せずに、違う方向に目を向けましょう。
まさに不満は肥満を招きます。

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動悸の漢方(2020/11/30)
心臓の拍動を強くまたは速く感じる、脈拍が乱れるといった症状が動悸です。
激しい運動をした時には誰でも動悸を感じます。
軽い運動で動悸を感じるような場合には、心臓の働きが低下していることが原因です。
心臓の働きが低下すると全身に血液を送り出せなくなるため、
心拍数を増やすことによって、その不足を補おうとして動悸が起きます。

また、不安やストレスから起きる動悸もあります。
一般には苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)をよく用います。
これでも治まらない心臓の動悸には苓桂朮甘湯に李根皮(りこんぴ)、
呉茱萸(ごしゅゆ)、牡蛎(ぼれい)を加えた定悸飲(ていきいん)です。
下腹から上る感じで心をつく奔豚(ほんとん)の気には、苓桂甘棗湯(りょうけいかんそうとう)。
ほかにヘソ辺りに動悸を感じる時には、竜骨牡蛎(りゅうこつぼれい)剤の
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)を使います。

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逆子(さかご)の漢方(2020/12/7)
漢方では、腎(じん)が子宮や卵巣などを支配(コントロール)していると考えます。

妊娠後期になると腎が不安定になり、特に強い恐れや驚きがなくても
奔豚(ほんとん)の病の状態(気逆:きぎゃく)になることがあります。
そのために、気が上に突き上げるので、赤ちゃんは影響されて上に上がっていこうとして、
下になっていた頭が上になります(骨盤位:こつばんい ※俗にいう逆子(さかご))。
したがって、上昇する気を下に下げるだけで逆子が治る(胎位矯正)といいます。

胎位矯正には苓桂甘棗湯(りょうけいかんそうとう)がよいようです。
また、鍼灸の世界では、足にある至陰(しいん)や三陰交(さんいんこう)などのツボを刺激するとよいとのことです。
漢方では、気の異常が原因で起こると考えられます。
妊婦のことゆえ、行う時には、かかりつけの産科医にご相談ください。

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日本人の好きな柴胡(剤)(2020/12/14)
小柴胡湯を含め柴胡剤といえば、日本人が好きな漢方薬のひとつです。
本場中国ではあまり使わないそうですが、なぜ日本人が好きなのでしょうか?
日本人には神経質でまじめな性格が多いから…とも言われますが、どうなのでしょうか。

柴胡剤は、一般に柴胡+黄芩の薬対が含まれた処方のことを指します。
これは漢方の消炎解熱剤です。
内臓の各種炎症などを取り除く働きがあります。
神経質でまじめな人は、ストレスに弱い一面があります。
そんな時は、柴胡+芍薬の薬対を使う方が抗ストレス作用を発揮します。
肝に血液を補給する芍薬の力で、ストレスに弱い肝を支えます。
この場合、小柴胡湯より加味逍遥散や柴胡桂枝湯、柴胡疎肝湯が適しています。
なお、柴胡桂枝湯には柴胡+黄芩の薬対も入っています。

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間質性肺炎は黄芩が原因か(2020/12/21)
かつて日本で使われる漢方エキス剤の中で断トツ一位を維持していたのが小柴胡湯(しょうさいことう)です。
その頃は、慢性肝炎の内服薬が少ないうえ、副作用の少ない漢方薬として発売されていたので、
多くのドクターが使っていたのです。

しかし、不幸にも間質性肺炎という副作用が発生し、一挙に人気がなくなり使われなくなりました。
薬局・薬店で取扱っているOTC(処方箋が不要の医薬品)の漢方薬では、商品すらも置いていない状態でした。
間質性肺炎の原因は、黄芩(おうごん)という生薬と見なされたようです。
必ずしもそうではありませんが、黄芩ほか柴胡(さいこ)、半夏(はんげ)、生姜(しょうきょう)という
熱を取って乾かす生薬が処方の過半数を占めるために、長期で飲み続けると肺が乾燥して、アレルギー炎症が起きたようです。
漢方薬に限らずお薬は、病名だけでなく、体質・症状をよくみて使うことが大切です。

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コロナにより世界が変わった(2020/12/28)
今年2020年はコロナに明けコロナに暮れた感があります。
オリンピックを延期へと追いやったこの感染症により世の中は一変しました。
特に人と人の接し方が変わりました。
挨拶の時、東洋では相手とあまり接触しませんが、西洋ではキスやハグなど、相手と接触して挨拶を行う文化があります。
この違いが感染者数や死亡者数にも影響しているとの見解もあります。
残念なことですが、コロナ禍では接近してする挨拶は自粛が求められているようです。

大変恐れられているコロナ。
マスクをしたり、三密を避けたりするのは、自身がうつらないことと同時に、他人にうつさない行動なのです。

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