つもり違い(2019/1/7) | あけましておめでとうございます。本年も小太郎漢方梅田薬局をどうぞ宜しくお願い致します。 名刹の高僧が考えたといわれる「つもりちがい十ケ条」 1.高いつもりで、低いのが、教養。 2.低いつもりで、高いのが、気位。 3.深いつもりで、浅いのが、知恵。 4.浅いつもりで、深いのが、欲望。 5.厚いつもりで、薄いのが、人情。 6.薄いつもりで、厚いのが、面皮。 7.強いつもりで、弱いのが、根性。 8.弱いつもりで、強いのが、自我。 9.多いつもりで、少ないのが、分別。 10.少ないつもりで、多いのが、無駄。 なんとも、人間の核心をうまくついている名言ですね。 |
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耳鳴りとは(2019/1/9) | 聴力が衰えると当然音が聞こえにくくなります。 これを難聴(なんちょう)といいます。 齢をとると、特に高音部の音が聞こえにくくなり、大きい声で周りの人から呼ばれても分からないのに、 低音で自分の悪口などをささやかれたりするとすぐに感づくのがお年寄りの聴力の特徴です。 また、難聴なのに、静かな夜になると、耳のあたりで、ジージー、キーンキーンという音が執拗に鳴り続ける経験はありませんか。 これが耳鳴りです。 耳鳴りは気になって鬱陶しいものです。 耳鳴りと難聴の原因は同じで、難聴で聞こえにくいため、音を感受する脳が感度を上げて興奮し、 必要でない音(自分の心臓の拍動)まで拾い、雑音(耳鳴り)となります。 すなわち脳の過剰反応なのです。 |
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耳鳴りの漢方(2019/1/15) | 耳鳴りにぜひ漢方薬をお試しください。 耳鳴りは老化現象のひとつでもあり、腎(じん)という臓器の衰え(腎虚(じんきょ))により起こります(ジージーという低音の耳鳴り)。 また、精神的な不安や悩みを抱えている場合には、若い人でも起きることがあります。 それは肝(かん)の異常(キーンキーンという高音の耳鳴り)から来ています。 この両方に良い漢方薬が滋腎通耳湯(じじんつうじとう)です。 腎を滋養して、耳を通じさせる薬という意味の処方です。 処方名には肝を整える意味は入っていませんが、配合成分には柴胡(さいこ)や香附子(こうぶし)、 川芎(せんきゅう)といった肝気の流れをよくする生薬(この3つの生薬で通気散という処方)もしっかり含まれています。 耳鳴りと共に難聴も改善してくれるのです。 |
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六不治(2019/1/16) | 紀元前90年頃に書かれた『史記』の「扁鵲(へんじゃく)・倉公伝」には 患者の病気に対する取り組み、心構えなどについて記されています。 それが、名医・扁鵲が唱える六不治(ろくふち)(病気が治らない原因)です。 一の不治。おごり高ぶり、わがままで、道理が分からない。 二の不治。体を軽んじ、財を重んじる。 三の不治。着るもの、食べるものが適切でない。 四の不治。陰陽や五臓の働きが一定しない。 五の不治。衰弱して薬を服用できない。 六の不治。巫(みこ)や呪(まじな)いを信じて、医者や医学を信じない。 ※四の不治は、陰陽の気が乱れて、内臓の気が安定しないと体はバランスを崩して病気が長引くこと。 現在でも充分に通じますね。 |
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風邪は万病のもと(2019/1/21) | 風邪(かぜ)はあらゆる病気を引き起こす原因になりますから、軽く見てはいけません。用心が必要です。 かぜというのは、一般に西洋医学でいうかぜ症候群(悪寒、発熱、頭痛、呼吸器疾患などが中心)です。 一方、漢方では、風邪(ふうじゃ)と読み、突然発病したり、病状が激しく変化する風(ふう)の邪気(じゃき)を指します。 自然界の風は、インフルエンザなどのウイルス、いろいろな病原菌、鼻炎を起こす花粉など、目に見えない邪気を運んできます。 したがって、かぜ症候群以外の感染症もたくさん含まれることになり、重篤な肝腎の病なども、 ある程度病気が経過すれば明らかになりますが、発症初期には、かぜと同様の症状を呈します。 たかが風邪、されど風邪という戒めです。 ※東洋医学では、風邪(ふうじゃ)は、肩甲骨の間にある風門というツボから入ってくると言われています。 ゾクッときたら、風門のあたりを温めると良いそうです。 |
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冷え症の漢方(2019/1/23) | 冷えや寒さ(寒邪(かんじゃ))に侵されると、「冷える、流れが止まる、縮こまる」という体の変調が現れます。 すなわち、手足やお腹が冷える、全身が寒いなど、気血の流れが停滞する、 寒いと指が縮こまる(かじかんで上手く動かせない)などの訴えが出ます。 こんな時には体を芯から温める漢方薬がよいでしょう。 体を温める附子(ぶし)や乾姜(かんきょう)などが配合された桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)、 人参湯(にんじんとう)などを服用するとすぐに体が温まってきます。 また、直接的ではありませんが、血液の循環を良くすると、すみずみまで血液が行き渡り、結果的に体が温まります。 それには、当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、芍薬(しゃくやく)などが配合された婦人宝(ふじんほう)や 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、五積散(ごしゃくさん)などがあります。 中でも婦人宝は飲みやすいシロップ剤で冷え症を改善するお薬です。 漢方薬を上手に使って、身も心も温かく! |
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病人を治す漢方(2019/1/25) | 一般に病気は、正気(せいき)(抵抗力、免疫力など)と外邪(がいじゃ)(病原菌やウイルスなど)の力関係でなります。 西洋医学では外邪をより強力な武器(クスリ)で攻撃します。 しかし漢方では、正気の方を高めることで、体内の病毒を退散させることができると考えます。 したがって、体のバランスを漢方薬で整えることができれば、治療につながるわけです。 現代医学の放射線治療や化学療法剤ではガンそのものをやっつけることもできますが、人体の正常細胞自身もそれによって攻撃されるので、 ガン細胞はなくなったが、正常細胞まで弱ってしまい体調を崩してしまうということにもなりかねません。 そんな時によく使われる漢方薬が、十全大補湯や補中益気湯、玉屏風散など、体力を補う人参や黄耆などが配合された補剤です。 大病をした後、または術後などで体が弱っているときや、産後の体力回復などの目的でよく使われているお薬です。 |
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効かせ方を追求する漢方(2019/2/12) | 西洋医学が進んだ日本の現代医学はいろいろな病気を克服し人類に貢献してきました。 抗生物質ができ、ステロイド剤が登場し、今再生医療としてiPS細胞が発見され、 自分の皮膚からいろいろな臓器をつくれるような時代が近い将来やってくるかも知れません。 現代医学は新しい薬(技術)をどんどん発見して日本人の平均寿命を延ばしてきました。 一方漢方薬はどうでしょう。 使う薬は2~3千年前と少しも変わらず、草根木皮などからできた薬草を使って治療しています。 食品に近い薬であっても、それが病人の証(しょう)(体質・症状)に合えば、よく効きます。 西洋医学は効く薬を探し、漢方では昔からある薬で、効かせ方を追求してきたのです。 今、西洋薬だけでなく漢方薬を一緒に使われるお医者様も増え、漢方薬の力が見直されています。 |
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花粉症の季節(2019/2/18) | 花粉症はアレルギー性疾患のひとつで、喘息や一部の皮膚炎と同じ免疫の異常です。 免疫(疫から免れる)とは外敵(ウイルス、細菌、花粉など)から身を守る体の防衛システムです。 このシステムがなければ、人は簡単に外敵に侵されてしまいます。 その防衛システムが、異常に強く働くと自分自身の細胞を傷つけ、炎症が発生します。 したがって、免疫システムは強くても、弱くても健康ではないわけで、まさに中庸でなければなりません。 花粉症はスギ花粉がアレルゲンとなって発症するものですが、それを異常に感じて、徹底的に排除するとならないかというと、 それよりも異常なきれい好き、清潔感が免疫異常を高めているとの見解が出されています。 |
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証(しょう)について(2019/2/25) | 西洋医学では、患者を診察して病名を決め、その病気を治療します。 一方、漢方では、病名が何であろうと患者個人の体にあらわれる症候パターン(証)を導き出し、それに従って治療を行います。 その症候パターンは、患者の自覚症状と漢方的診察による他覚所見に加えて体質や体格などを考慮して決めます。 中でも最も基本的な概念は八綱(陰陽、寒熱、虚実、裏表)でしょう。 陰陽は全般的な病気の類型、寒熱は病性(疾病の性質、疾病の特性はどうか)、 虚実は病勢(正邪の盛衰、疾病の勢いはどうか)、裏表は病位(疾病の部位、疾病はどこにあるか。詳細に見るときは五臓六腑など)といいます。 このように、漢方薬は「証にしたがって出す」のが基本なのです。 |
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同病異治(どうびょういち(2019/3/4) | 前回で、漢方では証を導き出して治療を行うと紹介しましたが、 ひとくちにかぜといっても証(体質・症状)が違えば、使う漢方薬が異なるのが、同病異治です。 例えば、冬のかぜと夏のかぜは、使う漢方薬が違います。 寒い冬に流行るインフルエンザの症状は、悪寒、発熱、頭痛、筋肉や関節の痛みなどです。 このウイルスは、乾燥した寒い冬の時期に活発になります。 こんな時には体を温める葛根湯や麻黄湯などを用います。 一方、夏風邪は、寒けよりも、夏の暑さで、食欲が衰え、水分を取り過ぎ、下痢や胃腸障害をもたらします。 時に暑さでノドが赤くはれ、口の渇きを訴えるようなケースには藿香正気散や銀翹散などを用います。 |
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異病同治(いびょうどうち)(2019/3/11) | 病気が異なっても証が同じであれば、同じ漢方薬で治す。 これを異病同治といいます。 例えば葛根湯。漢方を知らない方でも、かぜや肩こりを治す薬であることはご存知の方も多いのではないでしょうか。 葛根湯の証は「表寒証&表実証」となります。 表寒証:体表部(皮膚)が寒い、すなわち体が冷えること。 表実証:体表部の緊張が強くて汗が出ない状態をさす。 このことから、寒けの強いかぜや筋肉が緊張して起こる肩こりなどに使えるわけです。 表実証からジンマ疹などの皮膚病にも応用できます。 汗が出ない時に使うことから、出産したばかりの女性の母乳※が出ない時にも葛根湯が使われたりします。 ※東洋医学では母乳も汗と考える。 このように葛根湯は多彩な顔を持った漢方薬のひとつで、これ一つでいろいろな病気に使えます。 |
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フーテンには釣藤鈎(ちょうとうこう)(2019/3/18) | 「フーテンの寅さん」でお馴染みのフーテン。 漢方にもこの用語があり、風癲と書きます。 癲(てん)とは西洋医学でいううつ病やテンカンのことをさします。 心が抑鬱されて無気力になった状態です。 風邪(ふうじゃ)によってもたらされた癲の病です。 そこから、ボーッとして何もせず、非常識でおかしな行動をとる方をいうようになりました。 風のように突然やってきて、周りをかき乱し、さっさと去っていく。 まさに寅さんのような人で、定まった仕事も持たず、ぶらぶらしている人です。 漢方の五行説でも春の病は風(春一番)。 風癲には、釣藤散や抑肝散加陳皮半夏などの釣藤鈎(ちょうとうこう)が配合された処方を用います。 |
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春なのに心が晴れない(2019/3/25) | 「暑さ寒さも彼岸まで」。 関西では、その手前に行われる「東大寺のお水取り」が終わるまでは春が来ないといわれています。 余談ですが、火と水の祭典・お水取りは弊社・小太郎漢方製薬とほんの少し関係があります。 社名の小太郎は小太郎岩(三重と奈良の県境にある)からとっていますが、じつはこの当たりから松明に使う木材が東大寺へ送られています。 もうすぐ春だというのに、なんだか心が晴れないという方には、春に向けての心のケアとして、柴胡疎肝湯(あるいは加味逍遥散)が適しています。 始まりの春の不安で環境変化についていけない方に。ぜひお試しください。 |
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治病治人(ちびょうちじん)(2019/4/2) | この四字熟語は、「病気を治すことは人を治すこと」 という意味があります。 たとえば、糖尿病患者の治療だからといって、尿糖、血糖ばかりに注意して、強力な薬を用い、極端な制限食をしき、 尿糖は(-)、血糖値は正常値となったとしても、患者さん自身の衰弱を早め、寝たきりの病人になったのでは、何の値打もありません。 治療者が病気を治すということは、病気が対象ではありません。 まず、病人ありきなのです。 肥満でダイエットをされている方によくあるケースです。 極端な食事制限で体重を落とすことだけを目的とすると、貧血や生理が止まるなど、必ずしも患者さん自身が健康的に痩せているとは言えなくなります。 私もこれを肝に銘じて、治療に当たっております。 |
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痃癖(ゲンペキ)に延年半夏湯(2019/4/9) | 肩がすごく凝ったときに「ケンビキ」を揉んだらいいと きいたことはありませんか? 辞書を引くと「ケンビキ」は肩凝りのことと出てくるものもあります。 昔は「ケンビキから風邪をひいた」「ケンビキから歯が痛くなった」とケンビキが日常的に使われていました。 ケンビキ(肩癖)は痃癖(ゲンペキ)がなまった言葉だそうです。 広辞苑には、「痃癖は癪(シャク。種々の病気によって胸部・腹部に起きる激痛のこと)の一種。 脇腹やヘソの周辺にしこりがあり、頸から肩などにかけて筋肉がひきつること。肩こり。」と3つの意が記されています。 このことから延年半夏湯を用いる痃癖は肩こりを伴った脇腹あたりの癪。 あるいは、脇腹あたりの痛みを伴った肩こりと解釈することができます。 がんこな肩こりが病気の引き金になっていたわけです。 また、足が冷える(特に足首)場合にも使われます。 |
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春の養生(2019/4/15) | 最近やっと春めいてきましたね。 「春眠暁を覚えず」といって、春の夜は寝心地がよいので、朝になってもなかなか眠りがさめないですね。 しかし、春はできるだけ朝早く起きるようにしましょう。 春は、日の出とともに自然の陽気が動き始めるので、体をそれに合わせるためです。 陽(春の気)の上昇とともに、体に潜んだ気が発散して、天地で万物みな発生してくる季節です。 春は気(エネルギー、肝気)が上ってきます。 そのために、人は活動的になります。 この季節、入学や入社、転勤で新しい環境の下でじっとしてはおれないわけです。 しかし、この動きについていけない人には、気の発揚が却ってまぶしく、逆に沈んだ気分に落ち込みます。 春は精神的に不安定になりやすく、ストレスを受けやすいのです。 |
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花冷えに玉屏風散(ぎょくへいふうさん)(2019/4/22) | 春は夏に向かう季節であり、冬に向かう秋よりも暖かいと思われがちです。 4月に入ると暖かさが増してきますが、時には北から冷たい空気をもった高気圧が南下して寒くなることもあります(これを花冷えといいます)。 この季節、少し油断をして薄着で体を冷やすと風邪をひいてしまうことになります。 そんな時に重宝するのが玉屏風散です。 扶正去邪(ふせいきょじゃ)の薬能をもつ玉屏風散は、風邪などの病邪を寄せ付けない(去邪)ばかりでなく、 処方の主薬である黄耆(おうぎ)という生薬が人間本来に備わっている正気(免疫)を扶(たす)けて、未然に防いでくれます。 風邪をひいてはいけない妊婦さんや体の弱いお子さん、高齢者などにも最適な処方です。 |
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身土不二(しんどふじ)(2019/5/7) | 身土不二(しんどふじ)とは、身と土は切り離せないという意味で、地元の旬の食品や伝統食が体に良いという食養にも活かされています。 太陽の紫外線にあたると野菜は酸化して、遺伝子が壊されそうになります。 そこで野菜は必死になって酸化しないような物質をつくります。 それがビタミン類です。したがって日の光を浴びた野菜にはビタミンが豊富なのです。 本来、冬野菜であるホウレンソウは、ハウスものはビタミンCの量が露地もの(自然栽培)の3分の1。 また、野菜や果物は収穫した瞬間から栄養が失われ、特にビタミンは減るスピードが速いそうです。 よって、海外でつくられた作物は栄養価が低いといわれています。 食べ物は、地元でとれた旬のものを食したいものです。 |
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六陳八新(りくちんはっしん)(2019/5/13) | 漢方用語に、六陳八新(りくちんはっしん)というものがあります。 生薬ごとに、陳(古いもの)の方がよい、新(新しいもの)の方が良いという教えです。 陳は麻黄、狼毒(ろうどく)、呉茱萸、半夏、陳皮、枳実の6種類。 新は蘇葉、薄荷、菊花、桃花、款冬花(かんとうか)、沢蘭(たくらん)、塊花(かいか)、赤小豆の8種類です。 陳に分類された生薬は、精油、その他の成分で身体に害があるものが、古くなれば精油の揮発、空気酸化等で有害な作用が減じ、 一方、新に分類された生薬は、薬効として必要な揮発性成分が含まれているからといわれています。 漢方方剤に二陳湯という処方があります。 2つの陳(半夏と陳皮)を配合して痰飲(水毒)を取り除くものです。 数千年前にこうした考え方があったというのは、大変興味深いものです。 |
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糖尿病の三減則(2019/5/20) | メタボリックシンドローム(内臓脂肪型症候群)と診断されるには、腹回り以外に、 血糖値、中性脂肪値・HDLコレステロール値、血圧の数値が影響してきます。 内臓脂肪が多くなるメタボリックシンドロームは糖尿病をはじめとする生活習慣病になりやすく、心臓病や脳などの血管の病気につながりやすいのです。 たとえば、糖尿病で内臓脂肪を増やさない食事のコツは、薄味のものを腹八分目にすること。 これを実行するための具体策は減塩、減脂、減糖の三減則です。 塩分の摂り過ぎは高血圧を招き、塩っぱい味付けは、ご飯の食べ過ぎなど過食の原因となります。 味付けに塩分が多いと、バランス的に砂糖などの甘味も多くなるはずです。 また、砂糖を使った甘いお菓子も、カロリーオーバーだけでなく、血糖の上昇を引き起こします。 脂っこい料理は当然高カロリーで、血中脂質を増やし、肥満や動脈硬化へまっしぐらです。 糖尿病の三減則、できる限り実践していきたいですね。 |
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腹水のことなら(2019/5/28) | 少し時期がずれてしまいましたが、5月5日は端午の節句。 古来、邪気を払うため菖蒲や蓬を軒に挿し、粽(ちまき)や柏餅を食べます。 軒先には鯉のぼりを上げて祝います。 漢方では、鯉は利水消腫、止咳、通乳の効があり、腎炎や肝硬変による腹水に、小豆と鯉を一緒に煮込んで服用する赤小豆鯉魚湯があります。 しかし、現代にはエキス細粒の補気建中湯があります。 ブヨブヨとして指で押した部分が元に戻りにくい虚腫に使用されます。 補気建中湯でも充分にオシッコが出ない時には、指で押した部分がすぐに元に戻る実腫に使われる分消湯があります。 腹水で用いる場合は、虚腫の補気建中湯から使い、効果がなければ次に実腫の分消湯を使います。 ※腹水がある場合は自己判断せず、診療を受けることを優先するようにしてください。 |
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五月病は漢方が得意(2019/6/3) | 大学に入学した学生がGW明け頃、わけもな憂うつな気分に陥ることから、一般に「五月病」といわれるようになりました。 近頃は学生だけではなく、新社会人にも同様の症状が見られるようで、 新人研修が終わって実際に仕事を始めた後の6月頃に多いことから「6月病」ともいわれます。 医学的には適応障害で、中にはうつ病と間違われる場合もあります。 東洋医学では、春から初夏の木の芽立ちに起きる「肝の病」(肝気鬱結)ととらえて、柴胡と芍薬が配合された方剤を用いるのが、一般的です。 これに該当する漢方薬には、加味逍遥散、柴胡疎肝湯、そのほか四逆散や柴胡桂枝湯などがあります。 虚実を鑑別して、自分に合ったものを使うことが大切です。 ぜひ、当店へお越しください。 |
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色にもいろいろ薬効がある(2019/6/17) | 植物色素は昔から日本人の生活の中で使われてきました。 たとえば、藍染めに使う藍の根は板藍根といい、抗ウイルス作用があります。 紫色をした紫雲膏に配合されているムラサキの根(紫根)は皮膚の抵抗力を高めます。 黄色色素としては、黄柏、山梔子、鬱金(ウコン)などが有名です。 また、通経薬に配合されている紅花には黄色だけではなく、紅色色素(カルタミン)が含まれており、ご存じのように口紅の原料になります。 しかし、このような天然着色料は、一般に高価なため、それに代わって現代は合成着色料が用いられるようになりました。 |
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ジメジメベトベト嫌な梅雨(2019/6/24) | また梅雨がやって来ます。米作りの日本にとっては欠かせない季節ですが、 腰やヒザ、関節などにトラブルを抱えている人には嫌な梅雨です。 湿邪(水)は重いので、それに侵された部位は重だるい症状がでます。 また水は高きから低きへと流れるので、下半身や下肢のトラブルとして現れることが多くなります。 さらに、湿邪は定着性が高いため、一旦体内に入るとなかなか外へ出てくれません。 症状が長引き治りにくくなります。 そして、長く滞った湿邪はネバネバ、ベトベトして、さらに症状を悪化させます。 最後に、湿邪により気の運行が妨げられます。 気の昇降を失調させたり、経絡の運行を障害します。 水と上手に付き合って、梅雨を乗り切りませんか? |
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夏に多い脳梗塞(2019/7/1) | 脳卒中は、がんや心臓病に次ぐ国内死因第3位の生活習慣病です。 血圧が上昇しやすい冬場に多いと思われがちな脳卒中ですが、脳梗塞(脳血管が詰まる)に限っては夏場(6~8月)に最も多いそうです。 夏は気温が高く、汗を多くかいたり、体からたくさんの水分が蒸発したりします。 すると、血液粘度が高くなって、血液がドロドロネバネバになり、血栓が起きやすくなるためです。 すなわち、適度に水分を補給しないと脱水状態(熱中症)になりやすくなります。 一方、冬場に多い脳卒中は、脳出血(脳血管が破れて出血する)です。 寒さで、血管が収縮して、脳血管が破れやすくなり、出血を起こします。 夏も冬も循環器系の異常には、気を付けたいものです。 |
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大小の違い(2019/7/8) | 漢方薬の名前には、大○○湯とか小○○湯といった大小の付いた処方があります。 大の付いたのは大人用、小の付いたのは子供用なのでしょうか? いいえ、決してそうではありません。「作用(働き)の強弱」。 すなわち大は小より作用が強いと考えていただければ結構です。 大柴胡湯は小柴胡湯より消炎作用が強く、胸脇苦満(みぞおちから両脇にかけて張って痛む)が強く現われる時に使います。 大建中湯は小建中湯より温める力が強く、腸管の緊張が激しい方に使います。 大承気湯は小承気湯より瀉下作用が激く、頑固な便秘によいわけです。 瀉すときも補うときも、大は小より働きが強いのです。 この他に傷寒(寒けの強いかぜ)に使う大青竜湯と小青竜湯などもあります。 |
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処方名に数字がつくもの(2019/7/16) | 前回に引き続き、漢方豆知識です。 漢方薬は、一般に何種類かの薬草を混ぜて用います。 一方、民間薬は1種類の薬草だけを煎じて、日常的な病気に使ってきました。 たとえば、薏苡仁(ヨクイニン)単独ならイボに、薏苡仁湯(薏苡仁以外に6種の薬草が混ざったもの)なら関節痛や筋肉痛によいというわけです。 漢方薬の処方の名前に一、二、三などの数字がつくものがありますが、一から十までご存知でしょうか? 順番に申し上げますと、 一貫煎(いっかんせん、肝腎陰虚の薬)、二陳湯、三黄瀉心湯、四物湯、五苓散、 六君子湯、七物降下湯、八味地黄丸、九味檳榔湯、十全大補湯です。 配合している生薬の数を現わしているものが多いのですが、一貫煎(6種)、二陳湯(5種)、六君子湯(8種)など、そうではないものもあります。 |
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七情は五臓を乱す(2019/7/22) | 私たちの感情は常に変化しており、そのため日常的な喜怒哀楽が過剰になると病気の原因になります。 それが七情(喜・怒・憂・思・悲・恐・驚)です。 「怒ればすなわち気上がる」。過度の怒りは肝の気が血とともに頭に上がります。 「喜べばすなわち気緩む」。喜びが過度になると心の気が緩み、動悸や不眠を起こします。 「思えばすなわち気結ぶ」。過度の思い悩みや憂いは、気を停滞させ、消化機能(脾気)を失調させます。 「悲しめばすなわち気消える」。過度の悲しみは肺気を消耗し、息切れや咳などが生じます。 腎を失調させるのは、恐れと驚きで、「恐れればすなわち気下る」。 「驚けばすなわち気乱れる」など気の異常が現れます。 |
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噛めば噛むほど(2019/7/29) | 肥満は我が国にとって、健康に関わる大きな問題です。 暑い夏でも食欲が落ちない肥満者にとって、減量できる秘策があればこれほどありがたいことはありません。 みなさんは、ヒスタミンという言葉を聞いたことはありますでしょうか? ヒスタミンはアレルギー症状を引き起こす厄介な物質ですが、脳内では満腹中枢を刺激して、満腹感が得られ、 また交感神経を刺激して、内臓脂肪まで減らしてくれます。 噛む刺激が脳内の結節乳頭核という部分に届き、ヒスタミンを生み出すとのことです。 よく噛めば早食いにもならず、満腹感を得られ、大食を予防できるわけです。 暑い時期は、ツルツルとのど越しの良い冷やそうめんやざる蕎麦が食べたくなりますが、 この夏はできるだけしっかりと噛んでいただきたいものです。 |
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年とともに1年が早くなる(2019/8/5) | 子供の頃は1年を長く感じていたのに、なぜ大人になると1年があっという間に終わるのでしょうか。 われわれ人間は、体の新陳代謝速度が加齢とともに遅くなり、体内時計の進み具合が遅くなっていきます。 30歳の時は、3歳の時よりもゆっくりとしか回りません。 自分が気付かないだけで体内時計は遅くなっています。 物理的な時計は同じスピードで過ぎていきます。 自分の感覚では1年をカウントしていないのに、実際の時間は1年経っているという事態が生じているのです。 また、感動の多さにも関係し、いろいろな初めてを経験する子供に比べて、経験値を積んだ大人には刺激の少ない出来事ばかりで、 このことが時間の経過を早く感じさせるのです。 その他に、自分の置かれた空間の広さ(※)なども複合的に関係していると考えられています。 ※大人が昔通った小学校を訪ねると校庭が小さく感じるが、同じ空間でも子供には広く感じ、それが時間の経過をゆっくり感じさせる傾向があるそうです。 |
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早起きは三文の徳?(2019/8/19) | 夏は日が長く、そして暑いため、夜遅くまで起きてしまいがちです。 すると早起きがつらくなります。 引きこもりや鬱の方の大半が遅起きであることからも、早起きは健康に寄与しています。 早起きによって意志が強くなり、自信がつき、自分自身を上手にコントロールすることができます。 早起きで大事なことは、まず「起きる時刻を一定にすること」です。 「何時間睡眠が必要だから何時に起きる」と考えてはダメなのです。 起きる時刻だけをまず一定にすれば、勝手に寝る時刻がリセットされて、理想的な時刻に寝られるようにもなります。 暑い夏は、比較的涼しい早朝に起きて、仕事を早めにすませ、暑い昼間に少し昼寝をする余裕を持ちたいですね。 |
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蓮(ハス)の効用(2019/8/19) | 8月のお盆の期間は故郷に帰省された方も多いことでしょう。 盂蘭盆会(うらぼんえ)とは、先祖の供養をする日のことです。 梵語のウランバナの音訳です。 仏教では、お釈迦様が蓮花の上で瞑想する絵が描かれ、極楽浄土の象徴とされています。このハスの種子が蓮子(蓮肉)です。 その地下茎が蓮根で食用となります。 蓮子には収斂強壮の働きがあって、脾胃を補益して下痢を止めてくれます。 この目的で配合されているのが参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)です。 その他にも、心火(しんか:興奮性の神経衰弱)を冷まし精神を安定させる働きもあることから、 神経性頻尿や不眠症などに用いられる清心蓮子飲(せいしんれんしいん)にも配合されています。 |
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土用の丑のウナギ(2019/8/26) | 皆さんは先月の今頃、土用の丑の日にウナギは召し上がりましたか? 土用は春夏秋冬、年に4回あります。立春、立夏、立秋、立冬の前18日間をさしますが、現在ではもっぱら立秋の前の夏の土用だけとなりました。 土用の間は、土の気が盛んになるため、土いじり、種まきなど、土にかかわる作業が禁忌とされていました。 この頃は暑さのために体力を消耗しやすく、これを乗り切ることが夏の健康につながると考えたのです。 土用の丑の日に、黒い物を食べるという信仰は平安時代からありました。 黒い物としては、魚の鱧、鯉、鮒、鰻、鯰(なまず)、それに野菜の茄子などです。 黒い物を食べておくと悪魔が入らないとの言い伝えがあり、今でも残っているのが鰻を食する習慣です。 ウナギのかば焼きはスタミナ食として最高です。 |
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六神丸で夏を越す(2019/9/2) | 9月になりましたが、まだまだ残暑が厳しいですね。 今回はそんな残暑に効果的なお薬のお話です。 中国で2000年の古い歴史を持つ薬といわれる六神丸。 そのユニークな名前に秘められた謂れがあります。 第一は、四方神(青竜、白虎、朱雀、玄武)に勾陳(こうちん)、騰蛇(とうだ)の二神を加えた六神にあやかったという名称です。 第二は、構成する薬草が牛黄(ごおう)、麝香(じゃこう)、蟾酥(せんそ)、熊胆(ゆうたん)の4つの動物生薬と 竜脳(りゅうのう)、人参の2つの植物生薬の6つの神薬(しんやく:高貴薬)からなるためです。 第三に、五臓六腑の五臓(肝、心、脾、肺、腎)に心包を合わせた六臓に効果があるという説もあります。 本来は心臓や胃腸への効果です。 夏は暑くて、体温調節のために汗をかきます。 「汗は心(しん)の液」といって、汗をよくかく夏は、心が疲れるので夏には最適な薬でもあります。 |
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重陽の節句は菊の節句(2019/9/9) | 本日9月9日といえば重陽(チョウヨウ)の節句。 菊の節句でもあります。 古来より、奇数は縁起のよい陽数、その奇数が連なる日をお祝いしたのが始まりです。 日本では奈良時代からこの日には宮中で菊を観賞し、江戸時代には武家で菊酒を楽しむ風習がありました。 菊は「翁草(オキナグサ)」「齢草(ヨワイグサ)」などと呼ばれ、長寿をもたらすめでたい花です。 漢方では、釣藤散(チョウトウサン)、杞菊地黄丸(コギクジオウガン)などに目を癒す目的で配合されています。 菊はまた歴代の天皇にも愛され、特に菊を好んだのが後鳥羽上皇です。 和歌を好み、『新古今和歌集』を勅撰する一方、隠岐に配流されるなど波乱万丈の生涯でした。 皇室の紋章に菊がデザインされているのは、実は後鳥羽上皇の菊好きを反映したものだそうです。 |
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黄耆の薬対(やくつい)(2019/9/17) | 補気薬・黄耆(オウギ)には多彩な働きがあります。 人参も同じ補気薬ですが、主に裏虚(リキョ:五臓の気の不足)を補う働きがあり、 一方、黄耆は表虚(ヒョウキョ:肌表(キヒョウ)の気の不足)を改善します。 まず、人参と合わせると、滋養強壮の働きが増し、参耆剤(ジンギザイ)といわれる補中益気湯(ホチュウエッキトウ)、 帰脾湯(キヒトウ)、十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)などの骨格ができます。 次に、防已(ボウイ)・白朮(ビャクジュツ)を合わせると腎炎や浮腫に効果がある利水の働きが期待できる防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)です。 3つ目に、防風(ボウフウ)・白朮を合わせると、固表(コヒョウ)の働きを高めてくれる玉屏風散(ギョクヘイフウサン)となり、 汗かきで、お肌が弱い方に使われます。 最後に、瘡家(ソウカ:皮膚病)の要薬として慢性化した化膿症に活躍します。 細菌に対する抵抗力を強め、排膿を促進し、肉芽形成を高めます。これには当帰(トウキ)と合わせて用います。 |
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健康に重要な生活習慣(2019/9/24) | ブレスローの7つの健康習慣をご存じでしょうか。 ①定期的に運動をする ②朝食をとる ③間食をしない ④タバコを吸わない ⑤充分な睡眠をとる ⑥適正な体重を保つ ⑦お酒を飲まない、あるいは飲んでも適量を守る。 これはカリフォルニア大学のブレスロー教授が、生活習慣と身体的健康度(障害・疾病・症状など)との関係を調査した 結果に基づいて提唱されています。 上記の7つの健康習慣の実践の有無によって、その後の寿命に影響することがわかっているのです。 食生活が豊かになって、日常生活が便利になると生活習慣が乱れてきます。 7つの健康習慣は大切だと頭ではわかっていても、なかなか実行できないものです。 しかしながら、生活習慣の乱れは、我々が思っている以上に健康に影響するのです。 令和の時代を元気に過ごすためにも、今日から7つの健康習慣を始めてみませんか。 |
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からだがその味を求める(2019/9/30) | 細胞レベルでみると、我々のからだは頭の天辺(てっぺん)から足の先まで、新陳代謝によって常に再生されています。 よい状態で齢をとるには、細胞の再生に必要な物質を取り入れ、からだのすみずみまで届ける必要があります。 「食べ物がおいしい」と感じるのは、実はからだのどこかの細胞がその食べ物に含まれている成分を必要とし、 我々の食欲中枢に命じて、食べさせているのかも知れません。 漢方薬もまさに同じで、健康な方には飲めないくらい苦い味であっても、心が弱っている場合には、逆においしく感じたりします。 漢方には五味(ゴミ)という概念があり、苦いは心に、酸っぱいは肝に、甘いは脾(消化器の一部)に、 辛いは肺に、鹹(塩からい)は腎に関係すると考えます。 酸苦甘辛鹹、あなたはどの味がおいしいと感じますか? たまにはからだの声に耳を傾けながら五味を味わってみてはいかがでしょうか? |
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10月は神無月(2019/10/7) | 新元号の令和になって半年ほどの月日が経ちました。 神話の国、日本にはいろいろな神様が存在します。 八百万(やおよろず)の神々が、10月に出雲大社に集まり、いろいろな事を決めるとされています。 出雲以外の各地では、神様がいなくなることから、神無月といわれるようになりました。 逆に、出雲大社では神様が集合するため、神在月とも呼びます。 いずれにしても、10月は神様に関連の深い月で、各地でお祭りが多くなります。 中でも商売の神様で有名な恵比寿さまは、この留守になった地元を守る役を任されたことから、恵比寿講が各地で行われたそうです。 一年で最も過ごしやすい秋。 食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋など楽しい行事がたくさんありますが、羽目を外さないことも養生のひとつです。 |
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対治と同治(2019/10/15) | 仏教の言葉で対治(たいじ)と同治(どうち)というのがあります。 高熱を発した時に氷で冷やして熱を下げるやり方を対治、 これに対して、からだを温かくして、汗をたっぷりかかせ、熱を下げる方法を同治といいます。 たとえば、悲しんでいる人に、「いつまでもクヨクヨしていてはダメですよ。気持ちを立て直してがんばりなさい」と励ますのが対治です。 これに対して、相手の気持ちになって共感する(時には黙って一緒に涙を流すなど)ことによって、 その人の心の重荷を少しでも軽くしてあげる対応が同治です。 対治は現状否定、同治は現状肯定です。 漢方はどちらかというと同治を重視する傾向があるように感じます。 対治であれ、同治であれ、病気も人もその本質を見極めて対応することが大切といえるでしょう。 |
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秋にも花粉症(2019/10/21) | スギによる春の花粉症は有名ですが、秋にもブタクサ(日本で最初に報告された花粉症の抗原)やヨモギ、 イネ科のススキ、キク科のセイタカアワダチソウなどが原因となる花粉症があります。 秋の花粉症は、気温が下がりだす季節の変わり目に起こるだけに、風邪と間違われやすいものです。 5日以上も水っぽい鼻水が続いたり、目のカユミを伴えば、花粉症を疑ってよいでしょう。 漢方ならもっぱら小青竜湯(しょうせいりゅうとう)に麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)を合方したものを使います。 炎症性のもので、小青竜湯にくらべシャープな切れ味が期待できます。 ちなみに、春の鼻炎には、まだまだ冷えが残っているので、温める作用の強い炮附子(ほうぶし)を加味するか 麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)を合方します。 |
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夏バテから秋バテへ(2019/10/28) | 今年は気候がおかしくて、まだ秋っぽくないですね。 夏から秋へ変わるこの季節の不調を「秋バテ」と呼ぶそうです。 冷房で外から体を冷やし過ぎると、血流や体温を調整する自律神経がうまく働かなくなります。 そして、眠れない、食欲が出ないなどの症状を訴えます。 夏バテは胃腸などが弱くて、暑い時期に食物を摂れないことでなるのに対して、秋バテは体力がある人でもなります。 今夏は猛暑で冷房を使い過ぎた分、寒熱の差が自律神経に影響を及ぼしています。 五積散や婦人宝(小太郎漢方から発売している気血両虚の液剤)、芎帰調血飲第一加減で冷えを取り除き、血行を促進しましょう。 ぬる目のお風呂に入って、身も心もリラックスされてはいかがでしょうか。 |
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生活習慣病に多い湿熱証(2019/11/5) | 慢性炎症に多い湿熱(しつねつ)という病態は湿邪(しつじゃ)と熱邪(ねつじゃ)が結合した大変厄介なものです。 熱証(ねっしょう:炎症)だからと単に清熱(せいねつ:熱をさます)するだけでは、もう一方の湿邪を増やし、 湿証(しつしょう)だからと化湿(かしつ:湿気を乾かす)するだけでは、逆に熱邪を増やしてしまいます。 その配合割合が大変難しいものです。 このような湿熱証に最もよく使われるのが 竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)です。 下焦の湿熱に良いということで、おりもの、膀胱炎などの下半身の炎症によく使われています。 一貫堂方になると下半身だけでなく、もっと幅広く全身の慢性炎症性疾患にも応用できます。 一貫堂方では慢性炎症を改善する温清飲が配合されており、小太郎漢方の竜胆瀉肝湯は一貫堂方です。 |
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低体温には気を付けて(2019/11/11) | 11月は霜が降りるので霜月。温暖化の日本ではありますが、 朝晩の寒さが身にしみてくる季節です。11/7は立冬でそろそろ冬支度となるのでしょう。 寒くなって気を付けたいのが冷え症や低体温です。最近若いかたに増えているそうです。 体温が1℃下がると、免疫力は37%低下し、基礎代謝も12%も落ち、体内での酵素の働きは半減するとのことです。 癌細胞などは冷たい環境が大好きです。 地球が暖かくなった分、冷たい物で体を冷やし過ぎたツケが回ったのではないでしょうか。 低体温や冷え症は漢方が得意とする分野です。 中でも五積散(ごしゃくさん)が最もよく使われます。 気・血・水などのめぐりをよくして冷えをよく取り除いてくれます。 胃腸にもやさしいので、長く飲み続けられます。 |
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道修町の神農さん(2019/11/18) | 薬の町・道修町(どしょうまち)の少彦名神社(すくなひこなじんじゃ)では毎年11月22、23日の両日に例大祭が行われます。 大阪では神農(しんのう)さんの祭りでお馴染みです。 無病息災、家内安全を願って、大阪の一年の多くの祭礼を締めくくるものとして「止め祭り」とも呼ばれています。 これが済めば大阪にも冬がやって来ます。 この両日には、御堂筋から堺筋までの約400mにわたり屋台が並び、製薬会社は自らのビルの前に飾り付けをします。 この両日の縁起物は、笹に張子の虎(はりこのとら)をつけたものです。 疫病(コレラ)除薬として虎頭骨などを配合して丸薬をつくった名残です。 この張子の虎の考案者は漢方古方派の大家・吉益東洞(よします とうどう)と言われています。 このお祭りが終わるともう年末ですね。 |
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沢瀉(たくしゃ)はサジオモダカの塊茎(2019/11/25) | オモダカ(沢瀉)は池や沢、田んぼなどに自生するクワイに似た水草で、可憐な花を咲かせます。 古くは王朝時代に貴族の車や武具の文様として用いられ、やがて家紋に転じました。 沢瀉は面高「面目が立つ」に通じるとか。 また、屋号の澤瀉屋(澤は沢の旧字体)は、歌舞伎役者の市川猿之助の生家が副業として薬草・沢瀉を商っていたことに由来します。 漢方に興味がある方なら、めまいといえば苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)がまず思い浮かびます。 しかし、それで充分に奏効しない時には、沢瀉に白朮(びゃくじゅつ)を加えた沢瀉湯(たくしゃとう)です。 薬味が少ない処方は速効性があり、対症療法に向いています。 切れ味は抜群です。 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や五苓散(ごれいさん)にもこの組み合わせが入っており、めまいにも応用できます。 |
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フラフラ型のめまいは危険(2019/12/2) | めまいが起こると、何か頭や脳に異常があるようで、気持ちのいいものではありません。 めまいには、大きく分けて、フラフラ型とグルグル型があります。 フラフラ型は揺れている感じで、真っ直ぐに歩けないが、意識ははっきりしています。 グルグル型は天井がグルグル回り、立っていられなくて、強い吐き気を訴えることも。 グルグル型の方が症状が激しく、重症かなと思えますが、実はフラフラ型の方が危険なのです。 脳梗塞などの病気が隠れている危険性が高いのです。 脳の活動低下、故障で起こるフラフラ型には、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)や真武湯(しんぶとう)がよく効きます。 耳のセンサー異常で起こるグルグル型は、メニエール病のことが多く、沢瀉湯(たくしゃとう)が適しています。 ※いつもと違うめまいを感じたら医療機関へ受診するようにしてください。 |
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口をきれいにすると病気が治る(2019/12/9) | 糖尿病患者はそうでない人に比べ歯周病にかかる割合が2~3倍高く、重症度も高いそうです。 さらに、血糖コントロールが不良だと歯周病が増悪するとも指摘されています。 高血糖は歯周病を招き、歯周病は更なる高血糖を招きます。 歯周病は、歯の周りの組織が破壊され炎症が起こる病で、日本人の70%がかかっているといわれています。 歯周病菌は、腫れた歯肉から容易に血管内に入り、全身にまわります。 よって、糖尿病だけでなく、脳や心臓などの循環器系の生活習慣病にも悪影響を及ぼしています。 このような悪循環を断ち切るためにも口腔ケアが大切です。 歯磨きはもちろんのこと、ドライマウスのような乾燥に気を付けましょう。 それには、漢方の甘露飲(かんろいん)、麦門冬湯(ばくもんどうとう)などが役立ちます。 |
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多剤服用、いつまで続けますか(2019/12/16) | 最近、複数の疾患を抱える高齢者などに飲みきれないほどの薬が処方され、 健康被害を起こす可能性がある「ポリファーマシー問題」が大きな反響を呼んでいます。 現代人は、症状さえなくなれば、病気は治ったと思いがちです。 しかし、症状は生体が病気と闘っている際の自然の反応なのです。 症状は抑え込むのではなく、症状を起こす原因を突き止め、取り除くことが大切です。 原因除去には、薬以外のものが使われることもあります。 ひとつの症状にひとつの薬では、ポリファーマシー問題はいつまでたっても解決しません。 漢方薬のように、複合症状をひとつの処方で解決できれば、せいぜい2つの処方で済みます。 ご自身にとってほんとうに必要な薬をこの機会に見直しましょう。 |
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白朮(びゃくじゅつ)と蒼朮(そうじゅつ)(2019/12/23) | 間もなくお正月。 お正月といえば初詣。京都では八坂神社のオケラ詣りが有名です。 お詣りのあと、オケラ火を家に持ち帰ってお屠蘇で一杯。 どちらにも漢方のオケラ(朮)が使われています。 朮には白朮と蒼朮の2つあり、その違いは明確で、どちらでもよいとはいえません。 白朮は補気薬(ほきやく)、蒼朮は祛風湿薬(きょふうしつやく)に分類されます。 白朮は内生の水湿を、蒼朮は主に湿痺(しっぴ:風湿邪(じゃ)の外感)を治します。 したがって、白朮は消化器の疾患、蒼朮は関節や皮膚などの疾患に用います。 補益力(ほえきりょく:虚証向き)では白朮、発散力(実証向き)では蒼朮に軍配があがります。 結局のところ、どちらも甲乙つけがたし、方意にあったオケラを使うことが最も賢明です。 |
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